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511話 魔族と人間の思考差

 俺は魔騎士ディラムの実力に感心し、

 その漆黒の鎧姿を見やった。

 するとディラムは俺の視線に直ぐに気づいて、

 こちらへ真っすぐに振り向いた。


「どうしたケイガ、

我に何か用件でも?」


「いや…お前の強さを改めて思い知っただけだよ。

イクシア王子と魔竜リュシウムを無傷で食い止めるなんてなあ。

俺にはそんな芸当は出来そうにも無いぞ」


「我は光と闇の魔力を持っていたからな。

それを上手く組み合わせたから出来ただけの事。


 貴様も我と拮抗する強さなのだから

 出来ないことは無いだろう」


「それはどうだろうなあ…」


「そんなことはあるまい。

ケイガの持つ気士術(きしじゅつ)の多様さなら

王子とリュシウムを

無傷で止める方法もあったと我は思う」


 幾分か弱気な俺にフォローを入れるディラム。

 そんな魔騎士の姿に俺は思わず笑みを浮かべた。

 

「どうしたケイガ、

何か可笑(おか)しい事でも?」


「いや…ディラムとは、

俺がこの異世界に飛ばされてからすぐに、

殺し合った関係だった筈なのにな。

そんな相手とそれが今、

こんな和やかな感じで

会話をしていると思ったら…

ちょっと笑ってしまってな」


「なるほど…

だが関係の移り変わりなど

移ろいゆく時の流れの中では些細な出来事。


人間よりも長い時を生きる我等魔族に取っては、

特にな。


我は巡り巡って

ケイガと今の関係になれた事で

貴様と組手鍛錬を積むことが出来、

更に強くなることが出来た。

これで我が主ガルヴァーヴ様の為に

もっと働けるというものだ。


だからケイガ、

我はこの巡り合わせに凄く感謝しているぞ。

無論、貴様自身にもな」


「お、おう!

俺の方もディラムには感謝しているよ!

ここまで強くなることが出来たのは

ディラムとの組手鍛錬が必要不可欠だったからな。

これからも…よろしく頼む!」


 俺はそう言葉を返すと

 何か小っ恥ずかしくなってしまい、

 思わずそっぽを向いてしまった。


 …俺はまるで優羽花(ゆうか)か!?

 ツンデレかよっ!?


 いや男相手にでも

 そんなに素直に好意を述べられては

 照れてしまうものだろう?


 しかしこのディラムという男…

 ちょっと素直というか、

 思ったことをそのまま口に

 出し過ぎるんじゃないですかね?


 いや…魔族と言う種族そのものが全体として、

 心があっけらかんしている気がする。

 感情のままに言葉を口にしている傾向がある。

 人間であれば、もっと感情を抑えた言葉を

 口にする傾向があるだろう。


 これが生物種として個体としては強いが数が少ないが魔族と

 個体としては弱いが数が多い人間の、

 種族の違いにおける

 考え方の差と言うものなのだろうか…?

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