502話 強制介入
「はああっー!
光剣斬!」
「グオオッー!
魔竜爪!」
光の王子と魔竜。
それぞれが持ち得る最大の、
光の魔力と闇の魔力を解き放っての一撃。
光と闇の正反対の属性がぶつかり合い、
周囲は凄まじい閃光に包まれた。
ふたりの居る小山の頂上がまばゆく輝いて、
まるで火山の噴火の前触れの瞬間にも見えた。
「…すごく、眩しい…です…」
「イクシア様…
一体、どうなりましたの?」
ツツジとイロハは戦いの行方を確認すべく、
必死に目をこらした。
そして閃光が収まっていく。
視界が元に戻ったイロハとツツジの眼に
真っ先に飛び込んで来たのは…
イクシア王子と魔竜リュシウムの一撃を
受け止めながら間に立っている、
漆黒の鎧を纏う魔族の騎士ディラムの姿だった。
「なっ…君は一体!?」
「ディラム…殿!?
何故ここに」
「ふたりともここまで。
我は、この戦いを止めに来た」
イクシア王子と魔竜リュシウムは
互いに持てる全ての魔力を振るって
渾身の一撃を叩き込んだ筈である。
それにも関わらず…
目の前の漆黒の魔騎士に、
こうもたやすく
受け止められてしまうなんてことが…?
ふたりは改めて、
自身の攻撃を受け止めている
ディラムの得物を確認する。
イクシア王子の光の剣を受け止めるは
ディラムの左手に生み出された光の魔力剣。
そしてリュシウムの
闇の魔爪を受け止めているのは
ディラムの右手に握られた
闇の魔力を纏わせた実体剣である。
それぞれ同属性の得物で受けることにより、
反属性の反応による衝撃を無くし
静かに攻撃を受け止めることが出来るが、
それは属性による特効が無い事を意味する為に
相手の攻撃を受け止める為には
純粋な魔力数値の高さが必要になる。
つまり、半魔族である
ディラムが持つ光の魔力、闇の魔力は
イクシア王子の魔力数値900、
魔竜リュシウムの魔力数値1500、
を大きく超えているということになる。
「リュシウム。
我等が主、ガルヴァーヴ様は
エクスラント聖王国と同盟を組まれた。
即刻この戦いを止めるのだ」
「ガルヴァーヴ様がその様な!?
…了解したッ。
しかしディラム殿…
以前よりも遙かに増したその強大な魔力…
どうやって身に着けたのだッ??」
「これは地上で交流を持てた、
とある人間との鍛錬の賜物。
そういうリュシウムも
大きく力を上げているでは無いか?
ガルヴァーヴ様も喜ばれよう」
ディラムは魔竜リュシウムにそう答えると、
イクシア王子へと顔を向けた。
「その光の魔力…
貴方がエクスラント聖王国の
王子という訳ですな?
我等魔竜軍に属する魔族との
戦闘行為の停止はポーラ陛下も了承済み、
ここは剣を収められよ」
「ポーラお姉様が…!?
了解した、ディラム殿」
リュシウムとイクシアは互いに獲物を収めて
戦闘を停止した。




