第5話 ぎ妹同盟(ぎまいどうめい)
『ぎ妹同盟』。
その昔、優羽花と静里菜が取り決めた二人の妹同志の同盟関係のことである。
『ぎ妹』の『ぎ』の部分に当たる漢字は二人でそれぞれ違うため、同盟表記はひらがなにしてある。
ちなみに優羽花が『義妹』、静里菜は『偽妹』と書いて共に『ぎまい』と読む。
この同盟については二人から直接教えてもらったから間違いは無い。
まあ俺にとっては血が繋がらなくても、お隣さんでも、二人とも大切な妹には変わりはないのだが。
「静里菜! ぎ妹同盟第一条、復唱!」
「はい優羽花、ぎ妹同盟第一条…節度ある兄妹関係を保ち、過剰な抜け駆けはしない、です」
「こほん…それでは静里菜、あんたは最近、お兄と仲良くし過ぎたのではないかしらね! しかもお兄の大好きな巫女服姿でね!
これは、ぎ妹同盟第一条に違反するとあたしは申告します!」
「でも優羽花はいつも兄さんと同じ屋根の下で暮らしてます、いつも兄さんとイチャイチャし放題です、それを差し引けば問題ないとわたしは思います」
「べ、別にあたしはお兄とイチャイチャしてないし! だいたい今だってそ、そんなに腕を組んで! しかも巫女服姿で! これが抜け駆け以外の何だって言うのよお!」
「まあ確かにこれはちょっとスキンシップが過ぎたかも知れませんね、でもそれ以前の出来事についてはわたしは兄さんとお喋りしただけです。ですよね兄さん?」
「あ、ああ…確かにそうだな」
「ですからわたしの今の行為を加えても兄さんと同じ屋根の下で暮らしている優羽花と比べると差し引きゼロということになりますよねー。
はい、ぎ妹同盟に違反は全くありませんでした。この問題はこれにて終了です」
「ちょっと待ちなさい静里菜! あたしは納得してないからね! それにいい加減お兄からその腕を放しなさいよね!」
二人の妹が俺の目の前で争っている。
家の玄関の前でいい年の男とうら若き少女二人がひと悶着をしているのである…しかも一人は巫女姿である。
これは近所の奥様方の格好の話題の的でしかない。
一刻も早くこの場を脱出しなければ…俺は正直名残惜しかったが、その素晴らしい感触の巫女装束ごしの静里菜の腕を振りほどくとその場を一目散に駆け出した!
「ちょ、ちょっとお兄ー! 待ちなさいよー!」
「ああっ兄さんー!」
「じゃあ俺ひとっ走りしてくるからあ!」
妹二人は仲は良いのだが、俺のことになると何故かよくケンカになる。
だからこういう時は俺はその場に居なくなったほうがいいのだ。
俺は二人の静止の声を振り切って全力ダッシュした。
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