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492話 戦いの火蓋

「これは元大臣のゴルザベス…

そして元御用商品のバイアンに

教会長のクリスト。

ポーラ陛下に謀反を起こして追放された三者が

こんな所で顔を揃えていようとはね…」


 イクシア王子は三人を一瞥した後、

 彼等の眼前に佇む巨大な影へと視線を移した。


「なるほど…これが…噂に聞く…

このグリンジスに住み着いたという魔族の竜か?


ゴルザベス、バイアン、クリスト。

この魔竜が、

聖王都を追放された君たちが

僕達の聖王国に対する復讐の為に迎えた、

新たな(あるじ)という訳だね?」


「ち、違いますイクシア殿下、

このバイアンはあくまで商売相手としてだけでございます!

自分は聖王国に立て付こうという考えは毛頭ありません!」


「…貴様ア!

この商人風情が!」


 イクシア王子に必死に弁解をするバイアンに対して

 声を荒げるゴルザベス。


「イクシア殿下…誤解ですじゃ。

私は何よりも平和を尊ぶ教会の代表として、

魔の方々と話し合いの席を設ける為に

参っていただけなのですじゃ」


「この…嘘吐きの狸ジジイがア!」


 続いて弁解するクリストにも怒声を上げるゴルザベス。


「か、かくなる上は…

我が偉大なる(あるじ)魔竜(エビルドラゴン)リュシウム様。

この者は先ほど私達が申した通り、

このエクスラント聖王国の第二王子でございます。

エクスラントの王族はかつての大戦時の光の勇者の血を受け継いで、

我等並の人間では敵わぬほどの強大な光の魔力を持っております。

王子を討ち此の聖王国を我が手中に収める為にどうか、

リュシウム様の御力をお貸しください!」


「ほう…人間如きが…

この者を討てと、このワレに命令するか?」


「ひいっ!?

私はその様なおつもりでは」


「…まあ良いだろう。

500年前の光の勇者の末裔か…

ワレの相手としては悪くは無い。

せっかく地上に出て来たのに

一向に戦う機会も無く飽き飽きとしていた所だ。

この国の王子とやら?

少しはワレを楽しませてくれることを期待しているぞ?」


 リュシウムはその長い首を伸ばすと王子に向かって突撃してきた。


 どごお!

 と、地面を割る轟音と共に

 王子の居た地面に魔竜の巨大な頭がめり込んだ。

 しかし王子の姿は何処にもない。

 リュシウムの瞳が動き周囲を探る。

 そして自分の頭上に高々と跳び上がって、

 今の一撃を躱した王子を捉えた。


「ほう、人間にしてはなかなかの動きだな?」


「はあっ!」


 王子は腰に差した鞘から剣を引き抜くと

 リュシウムの首へと鋭く斬り付けた。

 だがその必殺の一刀は、

 がきん!

 と音を立てて空しく弾かれてしまった。


「人間の王子よ?

オマエとワレとの魔力数値の差は300以上もある。

そんなヤワな攻撃では…

ワレのウロコに傷一つ付けることは出来んぞ?」


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