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489話 演出

 竜穴(ドラゴンホール)の中央空間(ホール)は吹き抜けの構造になっており、

 その上部からは小山の頂上へと繋がっている。


 魔界五軍将・魔導将アポクリファルは

 空間移動の魔法で小山の頂上へと一瞬で転移(テレポート)した。

 其処には魔竜(エビルドラゴン)リュシウムが座り込んでいた。


「アポクリファル様?

魔法念話で聞こえてましたが…

アナタ様がワレの配下と偽って、

仲介役として人間共と直接話をすることで

こちら側に都合よく物事を進ませているのは理解しております。

ですが、何故ワレが魔界に帰っているなどと言う戯れ言を?

ワレはこの小山の頂上でずっと…

アナタがお造りになられた魔導具(リング)の実験をしていたと言うのに?」


「リュシウムよ、

こういうのモノはのう…

事実よりも雰囲気や演出が大事なんじゃよ。


今日は魔素が満ちる洞窟の中では無く、

外の山頂で実験をしている最中に

たまたま領主共が謁見にやって来たというのが事実じゃが…

それでは人間達から見れば拍子抜けになってしまうじゃろ?


奴さんから見れば儂らは強大な力を持った恐ろしい魔族たちなんじゃ。

そのイメージはなるべく壊さんほうが、

物事をスムーズに運ぶ上でも色々と良いんじゃよ」


「…ハ…ハア…?

ワレには良くわかりませんが…?」


「丁度、リュシウムには

魔導具(リング)を複数同時に装備する実験をして貰ってたからのう。

お前さんの魔力は限りなくゼロ近くにまで抑えられておった。

つまり魔界へ還っているという大嘘も、

まるで本当の事の様に偽ることが出来たという訳じゃ。


そして魔導具(リング)を全て外せば、

お前さんの魔力数値はゼロから元の数値に戻り…

まさに今、魔界から戻って来たと思わせることが出来るという訳じゃよ」


 アポクリファルはその両手の指をくい!

 と、招く様に動かした。

 それと同時に、リュシウムの指に嵌まっていた

 複数の魔導具(リング)が一斉に指から離れて宙に浮き、

 ふわりと飛んでアポクリファルの手に戻った。


「オオオオッー!

ワレの魔力が一気に戻るッ!?」


「それではリュシウムよ、

中央空間(ホール)に戻るとするかのう?

奴さんたちが首を長くしてお待ちかねじゃ」


「アポクリファル様、了解したッ!」


 アポクリファルが先行して浮遊魔法で中央空間(ホール)へと降下していく。

 リュシウムは翼を羽ばたかせ、彼に続いた。






********





「お三方たち、リュシウム様のお帰りじゃ」


「グオオオオオオオッーーーー!!」


巨大な竜の咆哮が洞窟内に響き渡った。


 ゴルザベス、バイアン、クリストの三人は

 地にふれ伏して頭を垂れて、

 魔族の竜の帰還を出迎えた。

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