487話 猪突猛進系
「はっ、これは…ケイガお兄様!
この先の魔族と思われる反応とは別に、
小さな魔力の反応が多数見受けられます。
これはもしかして…
魔族に我が聖王国の民が捕らわれているのでは…?」
イクシア王子は自身が掛けている
片眼鏡型の見通しの眼鏡に映し出される
細かな魔力反応を確認しながら俺に問い掛けた。
「ああ、その可能性は高い。
魔族ならば人間を人質にする等といった
外道な真似はしないだろうけど、
人間を巻き込んでしまう戦闘になると厄介だ…
だからここは慎重に」
「これは我が国民の危機…
一刻も猶予もありません!
ケイガ兄様、僕は先に行きます!
その魔族は倒さずに捕縛するなりして、
魔竜軍に属するかを問いただしましょう!
高速飛翔!!」
「ちょ、まっ」
イクシア王子は俺が呼び止めるよりも先に、
一筋の閃光となってまるでロケットの様に飛び去った。
「イクシア様は…
普段は打ち所の無いご立派な王子様なのですけれど、
深く考え無い所が多々ありますの…。
特に戦いとなると、
後先考えない所があるといいますか…」
「…猪突猛進…王子様…」
イロハとツツジは小さくため息を突きながら言葉を述べる。
「そ、そうなのか…?」
もしかして…脳筋系の王子様だとでも言うのか!?
ますます優羽花に似通っている気が…。
「と、とにかく!
イロハ、ツツジ。
とりあえず俺達も急ぎ王子の後を追うぞ!」
「ですわ!」
「…はい、兄様!」
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イクシア王子は高速飛行魔法・高速飛翔で
凄まじい速度で空を翔け抜けて大森林を越え、
高い魔力反応がある小山の麓へと到着した。
高速飛行魔法を解除して着地する王子。
だが其処には三台の馬車が止まっていた。
一台は貴族が乗る風の馬車。
一台は教会の高司祭が乗る風の馬車。
一台は大商人が乗る風の馬車。
その形は三者三様ではあるが、
どれもが豪華な造りの立派な馬車であった。
「これは…一体?」
「何者だ?
止まれ!」
貴族風の馬車の側に居た兵士が
イクシア王子に詰め寄った。
しかしもう一人の兵士が王子の顔を見て青ざめて、
詰め寄った兵士を押し留めた。
「…!?
おい待て、その御方は!」
「急にどうした?
俺達はゴルザベス様より
この先には誰も通さぬように命令されているんだぞ?」
「…君たちこそ何者だ?
僕はエクラント聖王国の第二王子イクシア。
この先に魔族と思わしき魔力反応があり、
その確認の為にやって来たのだが」




