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第48話 聖王国の王

「そなたが精霊様によって異世界から召喚された勇者様であるユウカ殿か、この様な病床からの挨拶で申し訳ない。

儂はこのエクスラント聖王国を治めるカイザ=ウィル=エクスラント。

おお…大きな光の力を内に秘めているのを感じる…これが伝説の勇者様の力か…」


 俺と優羽花( ゆうか)はポーラ姫たちに連れられて聖王国の王、カイザ陛下に謁見した。

 ミリィが以前言っていた通り、カイザ陛下は病に倒れて自室で静養しており、俺たちはベッドで横になったままの陛下に謁見するという形になった。

 カイザ陛下はベッドから身を起こすと優羽花に対して向き合った。


「父上、無理をなさっては…?」


 ポーラ姫が陛下の側に寄るとその身を支えた。


「ポーラニア、良いのだ。勇者様が来られたと言うのに国王である儂がこのままでは失礼であろう。精霊様にも申し訳がたたぬ」


 カイザ陛下はベッドに座った形で優羽花に対して一礼する。


「異世界から来られた勇者ユウカ殿、突然この世界、エゾン・レイギスに飛ばされて困惑してられよう。

我等エクスラント王国は精霊様より異世界召喚された勇者様を補佐するように言いつかされておる。

困ったことがあれば王国は全身全霊をもって協力を惜しみませぬ。

どうか、この王国を…いや、この地上、人間界を救って頂きたい。

人間を全て滅ぼそうとする魔族から、そしてその長たる大魔王から、何とぞ…お願い申し上げる…」


 カイザ陛下はそこまで言い終えると再びベッドに伏してその身を横たえた。


「ハア…ハア…この様な有様で申し訳ない…。

それから…勇者様の兄であるケイガ殿。

話には聞いていたが、本当に瓜二つなのだな今は亡き我が息子ファイズと。

申し訳ないが儂もポーラニアと同じように生まれ変わりと思ってしまい…ファイズとそなたを重ねてしまった。

一度死んでしまった者は二度と戻らない…それは身に染みてわかっている筈なのだが、まこと…人の心とは弱いものよ」


 陛下は俺のほうに顔を向けると申し訳なさそうに言葉を述べた。


「いいえ、陛下。俺の方こそ、たまたまファイズ殿下に顔が似ていたばかりに…期待させて申し訳ございませんでした」


 俺は陛下に向けて深々と頭を下げた。


「頭を上げてくだされケイガ殿。

そなたもユウカ殿と一緒に魔族と戦い、そしてポーラニアとミリフィアを暗殺に来たクロカワとも戦ってそれを退けたと聞いている。

魔族と戦う戦士であり、我が愛娘ポーラニアを助けて頂いたそなたには感謝しかない。どうか、これからもこの人間界を、そしてポーラニア達を護っていただきたい」


 カイザ陛下は身体を横たえたまま俺に頭を下げた。

 この国の長である王が異世界から来た俺達兄妹に頭を下げ懇願したのだ。

 これは大変なことだろう。


「はい、俺の力の限り、頑張ります!」


 俺は力強い口調でそう答えた。

 陛下はそんな俺に安心したかの様に笑顔を浮かべながら眠りについた。

 そして俺と優羽花は陛下に一礼すると王の部屋を後にした。

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