474話 拠点到着
馬車に乗った俺達はそのままグリンジスの検問を抜け、
グリンジスの街の中に入った。
聖王都に住まう貴族令嬢、そして彼女の召使とメイドという身分。
聖王都からのグリンジスへの入行許可証。
これは全てポーラ姫が準備した”本物”である為、
俺達は何の咎めを受けること無く
やすやすと検問を通過できたという訳である。
ちなみにイロハは本名ではなく別の名前の貴族を偽装し、
髪の色などの容姿も魔法で偽装して印象を変えている。
「ケイガ兄様、どうですか?
あたくし…
何かおかしいところはありませんわよね?」
「イロハ大丈夫だ、問題ない。
その偽装ならわからない筈だ。
確かにゴルザベスは貴族派筆頭で元大臣。
当然イロハをの顔を知っているだろうから、
この魔法偽装は当然の対応ということになるな」
「…ですけれどケイガ兄様。
あたくしの視点から言わせて頂くなら、
ゴルザベスの性格的には
自分が利用できる力ある貴族として
父の事はともかくとしても…
その娘である、あたくしの事は
取るに足らない女子供と判断して、
顔すら覚えてないと思いますわ」
「…そうなのか?」
「ええ、十中八九そうだと思いますわ。
ですがゴルザベスの手の者は、
あたくしを覚えて居るかも知れませんね。
此れは潜入調査ですわ。
ですから…
注意はしてもし過ぎることはありませんわね」
「なるほどなあ」
俺達はグリンジスの街の表通りにある
立派な造りの宿屋に到着した。
そしてこの一室を借り上げて当分の拠点とした。
表向きの理由は、
聖王都からやってきた旅行好きな貴族令嬢が
グリンジスで当分観光を楽しむ為の滞在先としてである。
「…おにいちゃん?
もうヒカリ出てもいい?」
「ああ、いいぞヒカリ」
「んー!
ヒカリ出るー」
俺の側の異空間に身を隠していた光の精霊ヒカリが、
この現実世界に実体化した。
貴族令嬢の一行に幼い少女が居たらおかしいだろうという事で、
グリンジスに向かう馬車に乗る時点で
ヒカリにはずっと異空間に隠れて貰っていたのである。
「ごめんなヒカリ、
ずっと窮屈な思いをさせて…
いや…もしかして精霊であるヒカリに取っては、
実体化したほうが逆に窮屈だったりするか?」
「んー、精霊にとっては
どちらでもかまわない。
でもおにいちゃんといっしょにいられる
こちらがわのセカイのほうがヒカリは居心地がいい」
「そっか…それならヒカリ。
俺達がこの部屋に居る時は、
実体化してくつろいでくれ」
「んー、
りょうかいお兄ちゃん」
ヒカリは嬉しそうに笑顔を浮かべて答えた。




