467話 サムズアップ
「わかった…無理はしないでよね。
もしまた心配かけるようなことになったら、
許さないんだからね!」
「おう!」
頬を赤らめて俺からそっぽを向いた姿勢の
優羽花に対して力強く答える俺。
「しかし…
以前の元の世界での優羽花なら、
俺が頭を撫でようものなら
”子ども扱いすんな!”って激怒したものだが…
異世界に来てから、
どういう心境の変化なんだ?
環境の違い?」
「い、いちいち言葉にすんな、
デリカシー無しの馬鹿お兄!
だ、だって…
あたしだけが強情ぶって、
ポーラさん達はお兄に頭撫でられて幸せそうなんて、
そんなのずるいし…
それに静里菜にだって、
もっと素直になったほうがいいって言われたし…」
「…えっ?
何だって?」
俺は優羽花が急に小声になって
ごにょごにょと言い始めたので
思わず問い返した。
「う、うるさい!
この馬鹿お兄!
調子に乗んな!
ばかばか!」
優羽花は顔を真っ赤にしながら
俺の胸をぽかぽかと殴りつける。
突然何を怒りだしたのかはさっぱり判らないが、
うん…この理不尽振りは
まさに優羽花らしいと俺は思った。
デレたと思いきや、あっと言う間に元のツンツン状態。
ナイスツンデレだぞ、優羽花!
俺は心の中でサムズアップを送った。
「あの、おふたりとも…そろそろ宜しいでしょうか?」
ポーラ姫がおずおずと俺と優羽花に話し掛けた。
おっと、何だか話が脱線してしまったが
グリンジス調査の件に戻さなくては。
俺はポーラ姫に向き直った。
「ケイガお兄様がそこまで強くおっしゃって下さるなら、
わたくしはこれ以上何も言いません。
グリンジスの調査、よろしくお願いいたします」
「ああ、任せておいてくれ!」
「ですが、グリンジスはこの聖王都ホウリイとは違って
お兄様の勝手知らぬ地。
おひとりでは何かと不便でしょう。
ですから、わたくしからは補佐をお付けいたしますわ。
姫騎士団から二人を同行させます」
「ありがとうポーラ姫、心強いよ」
「いいえ…
本当はユウカ様がおっしゃった通りにもう一人、
強力な魔族とも渡り合える戦力を持つ者を
お兄様に同行させるべきなのですが…」
「…そればっかりはなあ。
ディラムかヴィシルが居れば良かったんだが、
ふたりとも自分達がそれぞれ仕えている魔界五軍将に一度報告したいって
魔界に戻ってしまったタイミングでの事態だったからなあ」
「いいえお兄様、
魔族のお二人ではなく別の…
いえ今はその手筈が間に合いませんでしたので、
この話はお忘れ下さい。
…それはそうと、ケイガお兄様。
わたくしにもどうか、お兄様の愛を下さいませ」
ポーラ姫はそう述べると、
俺の前に歩みで出て其の可憐な頭を下げた。




