465話 適任者
「まあ…ボクの予測はあくまで最悪を想定しての事だからね。
そもそも今は魔族の竜の存在の有無の確認すらも取れていないんだ。
つまりゴルザベスが魔族と手を組んでいるんじゃ無いかというボクの予測も、
全ては只の杞憂であってくれれば良いんだけれどね」
「そうなりますと…
グリンジスの調査をどう行うかという事になりますわね。
魔族が存在する可能性がある以上、
魔族に対抗出来る戦力である聖王国守備軍を送るべきですが…」
「正規軍なんて送り込もうものなら、
今のゴルザベスは聖王都が自分の領地を没収する為に
送り込んで来たと思うだろうね…。
そうなれば聖王国内での内戦になる可能性が高い。
だから表立っての大規模での調査は
出来ないという事になるね」
「そこでゴルザベス殿を刺激しない様に
私達姫騎士団が極少数で秘密裏に
グリンジスに潜入し調査を行ったとして…
本当に魔族がグリンジス領内に潜伏していた場合は、
戦力的にとても魔族には対処できないということですね」
「わたくしは姫騎士団を
魔族相手にみすみす失う事はしたくありません。
つまり少数で魔族に対抗できる戦力を揃え、
グリンジスに潜入し調査するのが適切な術という訳ですね。
でも、そうなりますと…
それに適した人材は…」
ポーラ姫は目を伏せると次の言葉を言い淀んだ。
「つまり俺達、異世界人が適任ってことだな」
王の執務室の扉ががちゃりと音を立てて開いて、
鳴鐘 慧河、
鳴鐘 優羽花の
異世界地球の日本から召喚された
二人の兄妹が姿を現した。
「ポーラ姫、ミリィ、シノブさん。
話は聞かせて貰った!
少数で魔族に対抗できる戦力というのは
まさに俺たちの事だろう。
ここは俺にグリンジスに行かせてくれ」
「で、でもケイガお兄様…
グリンジスは正体不明の魔族がいるかも知れない事に加えて、
わたくしたちとは険悪な関係にある貴族ゴルザベスの領地なのです。
正直、何が起きるか解りません。
そんな危険な地にお兄様たちを行かせるなんて事は…」
「ははっ、別に気にすることは無いさ。
元々、俺と優羽花は
人間を滅ぼし地上を我が物にしようとする大魔王を倒して
この異世界エゾン・レイギスを救ってほしいという目的で
光の精霊に召喚されたんだ。
正体不明の魔族が大魔王に属する可能性が高いと言うなら、
その調査も俺達がするべき仕事って事になるんじゃないかな?」
「大丈夫だよポーラさん。
あたしもお兄もあれから随分と鍛えたんだからね、
大概の相手には負けないから!」
「おっ、頼りになるな優羽花!
だけどお前は此の聖王都でお留守番だ。
グリンジスへは俺一人で行く」




