463話 グリンジスからの報告
エクスラント聖王国の首都、
聖王都ホウリイ。
聖王国で最大の都市である。
都の中心には白く輝く白亜の城、
ホウリシア聖王城が建っている。
その名が示す通り、
エクスラント聖王国の長である【聖王】が住まう城。
エクスラント聖王国を治める聖王は、
他国の王とは少し趣が異なる。
王族の長である王が
聖王国の国教級宗教である【教会】から
最高名誉の座である【聖賢】もしくは【聖女】に認定されることが
聖王としての即位条件である。
昔は【聖賢】【聖女】に認められることはとても厳しく
聖王に即位出来ない王もかなり居たが、
いつの間にか只の礼儀的なものとなり、
王に即位した段階で大体の者はほぼ即位出来る様になった。
いや正確には…
【聖王】になるには【教会】の息がかかった
王でなければならないという事になり、
【教会】が聖王国の政治に深く関与するという
教会腐敗の要因となってしまったのである。
現聖王であるカイザは
歴代の王から続いていた、
教会の政治介入を大きく削減することに成功した。
そして現在の第一王位継承者であるポーラ姫は、
慎まやかな教会の信徒の王女として振る舞う事で
教会内での信任を得て、
即位前から【聖女】の認定を得た。
聖女は教会の一機関【修道会】の長でもある。
礼儀的に教会に聖女に認定されたのでは
只のお飾りの長ではあるが、
彼女は実力を伴っての認定である。
ポーラ姫は【修道会】の長として
教会内でも大きな力を持っているのだ。
彼女はその力を持って、
教会の政治介入を父王カイザより更に削るに至った。
彼女がこの聖王国で自他ともに【聖王女】と呼ばれているのは
この様な所以からである。
聖王女ポーラは病に倒れた聖王カイザの国王代理として、
現在の聖王国の政務を取り仕切っている。
今日も彼女は国王の執務室で、
聖王国内で起きる様々な出来事に追われていた。
「姫様、
グリンジスから気になる報告が上がっております。
何でも魔族を目撃したとか…?
それも巨大な竜の姿をしていたということです」
全身鎧に身を包んだ
ポーラ姫直属の姫騎士団の団長シノブ。
彼女は聖王国の地方都市のひとつである
グリンジス市を行き来している商人たちの報告をポーラ姫に伝えた。
「…竜の姿をした魔族?
しかし竜の魔族である魔竜は
わたくしたち聖王国と同盟を結んだ
魔竜将ガルヴァーヴ殿の眷属と聞いております。
同盟相手である聖王国領内に何の話も無く土足で入り込むなど、
魔竜将副官ディラム殿の実直な対応から見て考えにくいのですが…
見間違えではないのですか?」
「商隊での多数で目撃していることから信憑性は高いようです」
「それではディラム殿に一度確認を」
「ああ、
それは駄目だねポーラ。
ディラム殿は
一度魔界に戻って報告したいと言って、
今朝早くホウリシア城を立ったばかりなんだよ」
ポーラ姫の従姉で彼女を補佐する宮廷魔術師であるミリィが即答した。




