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438話 魔導実験開始

「儂が今研究している魔力をコントロールする為の方法は、

魔力を抑え込む魔導具を開発する事じゃ。


魔力を抑える魔導具を装備する事で魔力を抑え、

装備を外すことで魔力を元に戻す。

至ってシンプルな方法じゃよ。


魔界では魔力を抑える魔導具はついぞ造れんかった。

そこで環境を変えて地上での研究・開発を行ってみた所、

魔界では理論だけで再現は出来んかった

魔力縮小回路の構築・実働が出来てのう…

出来たんじゃよ、念願じゃった魔力を抑え込む魔導具が。

この腕輪こそがその試作品(プロトタイプ)じゃ。


リュシウム、お前さんを

はるばるこの地上の研究室にまで連れて来たのは他でもない。

この魔導具の実証実験に付き合ってほしいんじゃ。


今の儂の身体は基本魔力が低く、

肉体もそう強くはない人造魔族(ホムンクルス)だからのう。

魔力を抑える実験には適さぬ。

儂の配下の魔導軍にも適任者はおらんかった。


だが魔族の中でも基本魔力が高く、強靭な肉体を持つ

魔竜(エビルドラゴン)のお前さんなら…

魔力を抑える魔導具の実証実験には適任という訳じゃよ」


「アポクリファル様、

ワレの魔力数値は結界を超えられるギリギリの魔力数値である950。

実験は地上では行わなければならない以上、

確かにワレが適任というのは(うなず)けるが…

強靭な肉体が必要という言葉は、

一体どういう意味なのだ?」


「そりゃあ、お前さん…

実験には事故がつきものだし、

試作品(プロトタイプ)は爆発すると相場が決まっておる。

そうなっても大丈夫な様に、

魔導実験の試験者には強靭な肉体が必要不可欠な訳じゃよ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!

アポクリファル様は先程、

ワレを丁重に扱わせて貰うといったばかりでは無いかッ!?」


「もちろん丁重に扱わせて貰うわい。

例え事故で肉体が損傷しても、

儂の回復魔法で即回復・即再生・即復元するからのう。

”あふたーけあー”は完璧じゃよ。

安心して実証実験に臨むと良いぞ。

なら早速始めようかのう?」


「ちょ、おま」


アポクリファルははくるりと人差し指を廻した。

すると、その手に持っていた腕輪はふわりと宙に浮いて、

リュシウムの巨大な指にすっぽりと収まった。


「それでは…実験開始じゃ!」


 魔界の爺はパチンと指を鳴らした。

 次の瞬間、リュシウムの巨大な指にはまった腕輪が魔力の光の輝きに包まれた。


「オ…オオオッ!

ガルヴァーヴ様アッーー!!」


 若き魔竜の(あるじ)に助けを()う叫び声が、

 洞窟内に響き渡った。


 大魔王様直属の魔界五軍将のひとり魔導将アポクリファル。

 魔界一の魔導学者であると同時に、

 狂魔導学者(マッドソーサラー)として恐れられている存在。

 それが(まご)うことなき事実であった事を、

 若き魔竜リュシウムは身をもって思い知る事となった。

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