427話 超兄補足事項
俺は自室に向かって歩きながら、
現在の俺の覚醒状態について自分の中で整理する。
この一段上の兄状態である『超兄』というモノが
具体的に何なのかであるが…何の事は無い。
至って普通の、
仲の良い兄妹関係における兄の精神状態になるという事である。
つまり、妹歴16年の気心知れたベテラン妹たちである
優羽花や静里菜と同じ感情を、
ポーラ姫たち新人妹たち相手にも持つことが出来るということだ。
さっき俺がポーラ姫と別れる際に、
ひたすらCOOLであり冷静な対応が出来たのは、
そういうカラクリだった訳である。
俺が優羽花たちに過剰な性的反応をする訳が無い。
その感情をそのままにポーラ姫相手に準えて、
冷静に対応することが出来たという訳だ。
ちなみに気が50倍になるとか、
戦闘的なプラス要素は全く無い。
この『超兄』状態は、
ポーラ姫の思わせ振りな行動に弄ばれたと感じた時に、
兄心がブチ切れて爆発、覚醒したものである。
俺の心を弄んだ妹であるポーラ姫へのへの怒りが俺を覚醒させた?
いや…違う。
妹に弄ばれてしまう様な、
不甲斐ない兄である自分への怒りで、
俺はこの状態に至ったのである。
今後俺がポーラ姫を始めとする異世界妹たちと上手くやっていくためには、
この『超兄』状態は必要不可欠と成るだろう。
俺はこの状態であれば彼女たちを性的な目で見ることが無い。
つまり俺が望んでいる、
清らかな兄と妹の関係を何の支障も無く築いていけるのである。
俺はこの先の異世界兄妹生活に希望を見出していた。
「あ!
ケイガ兄様だ!」
「兄様…見つけました…」
「兄様ー
探しましたよー」
シダレ、ツツジ、カエデがふいに俺の前に姿を現した。
「さあ、兄様!
シダレたちのお部屋に帰ろうよ!」
「帰って兄様と一緒に…寝ます…」
シダレとツツジはそう言って
俺の両手を握って引っ張った。
「いやいやいや!
俺は自分の部屋に戻ってひとりでゆっくり寝るつもりなんだけど!」
「駄目ですよー兄様ー。
添い寝している可愛い妹を
途中でほっぽって抜けるなんて、めっ!
ですー」
カエデはそう言うと、
にこやかに笑みを浮かべながら俺の背中を押した。
俺は三人に、あの隠し部屋へと連行されていく。
「ちょっと待ってみんな!
俺は…自分の部屋へ戻るんだあ!」
俺の『超兄』状態は長い時間維持することが出来ない。
ポーラ姫との駆け引きで
『超兄』状態になる為に必要な、
兄心は使い尽くしてしまった。
いつもの未熟な兄に戻ってしまった俺には、
三人の妹たちに抗う術は無かった…。




