424話 強く出る時
「こら、ポーラ!」
俺はポーラ姫の名を叫びながら、
彼女の頭ごなしに城の屋根壁に両手をドン!
と叩きつけた。
これがアニメや漫画で話に聞く壁ドンという奴である。
いやあまさか俺自身が実演することになろうとは…
他らなぬ俺自身が一番驚いている。
「お、お兄様っ!?」
並大抵の事には動じない筈の
生まれながらの王族であるポーラ姫が動揺している。
そりゃあそうだろう。
俺が彼女に対して此処まで強く出たことなど
今まで無かったのだから。
しかし今は流石に強く言わなければならない時のである。
妹が間違った行動を取れば、
兄としては諭さなければならないのだ。
俺は妹歴16年の優羽花や静里菜が謝った行動をすれば
兄として諭し、時には叱りつけることして来た。
そして兄歴は短いとはいえ俺はポーラ姫の兄でもあるのだから。
俺はポーラ姫のまるで宝石の様な綺麗な碧眼を強く見据えながら口を開いた。
「こほん…ポーラ、
流石に今はのいけなかったと思うんだ。
妹が兄を驚かせるために
そんな思わせ振りな態度を取るだなんてね…。
そんなことをされては、
俺の理性が幾らあっても足りない…では無くて!
そもそも兄と妹は清らかな関係であるべきであってですね!
…あのポーラ?
聞いてます?」
「…ああ…ケイガお兄様…
急にそんなに力強く来て下さるなんて…
ついにその気になって下さったのですね…
ポーラ、精一杯に迫ったかいがありました…
それではお兄様…どうぞ…」
ポーラ姫はそう答えると
両目を閉じ俺に唇を突き出した。
いやいやいや!
違う違う違う!
そうじゃない!
俺の話を聞いてください!
「そうじゃなくてポーラ!
そういう行動はいけないと兄である俺は常々思う訳で!」
「お兄様早く来て…
焦らさないで…」
「…ゴクッ…
って、そうじゃないいいいーー!!」
「んもうお兄様!
今は、小賢しい小娘たるわたくしの唇を強引に奪って、
『その賢しい頭で考えられない様に、身も心も俺色に染めてやるぞポーラ!』
と叫ぶところじゃないですか?」
「いやいやいや!
何ですかその鬼畜シチェーション!?
俺のキャラ崩壊してませんか?」
「そ、そんな…ミリィお姉様の秘蔵の本には
その様な流れで描かれていましたのに…」
えっ、なにその本!?
何か現代日本からレディコミみたいな本が
異世界転移していませんか?
多数の日本人がこの異世界に転移している事は、
この聖王国に根付いているに日本文化的には明白。
その可能性は高そうである。
本当にそうだというのなら、
この国の情操教育に悪い影響を与えていないだろうか…
と俺は考えてしまった。




