423話 切れる兄心
「…う、うわあっ!
ポーラぁ近い!?」
突如、俺の至近に距離を詰めたポーラ姫。
俺は完全に気が動転してしまい、
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
だって…俺の顔のすぐ側に、
見れ麗しい巨乳お姫様のお顔があるんだぜ…?
これで全く動揺しない男などこの世に居ないだろう。
居るわけが無い!
だから俺は悪くない!!
ポーラ姫は俺に常に積極的にアプローチを仕掛けて来るので、
俺は彼女が近くにいる時には、
常にある程度心の備えをしているのだが…
ファイズ殿下の過去の話をした直後にすぐに来るとは思わず…
俺は完全に油断をしてしまったのだ。
心の準備が無くては俺は只の25歳童貞、
こんなほぼゼロ距離で、
金髪碧眼巨乳美少女プリンセスが接近しようものなら…
俺には全く抗う術が無い。
心の動揺の余り俺は金縛り状態になり、
全身の動きが完全に停止してしまう。
「ケイガお兄様…」
ポーラ姫は最早ただの木偶と化した俺への距離を更に詰めた。
このままでは…
彼女の艶やかな唇が俺の唇に…触れてしまうッー!?
うおおおおおーー!?
動けッ!
俺の身体ッ!
このままでは俺は!
ポーラ姫に唇をおおおーー!?
しかし俺の心の叫びと裏腹に
身体は全く動かない。
ああ…
優羽花…
静里菜…
すまない…
兄さんは…兄さんは…
俺は此処に完全に観念し、
目を閉じた。
「……?」
だが何も起きない。
俺は恐る恐る目を開けた。
ポーラ姫の唇は俺の唇に触れる寸前でその動きを止めていた。
「ケイガお兄様…
今…
とても心を動かされて…
驚かれてますよね…?」
「…そ、そりゃあ…
驚くのは当たり前だろう…
見れ麗しいポーラが突然、
そんな近くに来たら…」
「ファイズお兄様は
わたくしのアプローチには
全く心動かされることはありませんでしたわ。
でもケイガお兄様は…こんなにも違いますの。
ポーラはケイガお兄様のこういうところが…
とても純情で…
可愛らしいところが大好きなんです。
…でもケイガお兄様。
前に言った通り、
口付けは殿方からして貰うものですの。
ですから…わたくしが出来るのはここ迄ですわ」
ポーラ姫はそう言うとすっと俺から離れた。
…えっ…ええと…?
これってつまり…
ポーラ姫は最初から俺にキスをするつもりは全く無い訳で、
俺を驚かせる為だけに、
思わせぶりにその顔を俺の顔に近付けたってことか?
つまり俺は…ポーラ姫に、妹に、
一杯食わされたと…
そういうことなの…?
…この兄が、
妹に完全に弄ばれたということなのか!?
次の瞬間、俺の兄心はブチンと音を立てて切れた。




