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422話 中身の違い

 ポーラ姫から聞いたファイズ殿下の人となりは、

 俺の予想を大きく超えるものであった。

 品行方正(ひんこうほうせい)

 非の申し分のない立ち振る舞いの英雄と言った感じである。

 もちろん兄としての妹への立ち振る舞いも完璧というしかない。


「ははっ、

俺が思っていたよりも…

ファイズ殿下は兄の格が違った。

俺では…殿下には到底及ばないよなあ…」


 俺は偉大なる先達(せんだつ)の兄に圧倒されてしまい、

 思わず嘆きのぼやきが口に出てしまった。


「そんなことは決してありませんわケイガお兄様」


 そんな情けない声を上げた俺を、

 ポーラ姫は首を横に振って言葉を返す。


「…でもなあ…ふがっ…」


情けない声を更に上げようとした俺の唇を、

ポーラ姫はそっと人差し指を押しあてて制した。


「ケイガお兄様はわたくしの本当の思い人は、

ファイズお兄様だとおっしゃいましたわね?

そのお言葉に対して答えさせて頂きますわ。


…確かにわたくしはご指摘通り、

ファイズお兄様を思っておりましたわ。

そして瓜二つの容姿であるケイガお兄様に、

ファイズお兄様を少し重ねていた部分もあったのでしょう。


ですけれど、ケイガお兄様とファイズお兄様は

ご容姿はそっくりでも、そのお心は全く別人ですわ。

これはわたくし自身がよくよくわかっておりますもの。

ですからポーラのケイガお兄様への思いと、

ファイズお兄様への思いはそれぞれ全く別のものなのです。


だってファイズお兄様は年の離れたわたくしなど、

女性としては全く相手にしてませんでしたもの。

わたくしは所詮は只の子供でしたわ。

ファイズお兄様にはいつも優しく、

大人の対応で、

言うなれば体よく、

わたくしのアプローチは

いつもあしらわれておりましたの。

そもそもファイズお兄様は、

女性とのお付き合いにもとても(こな)れておりました。

実際に正室候補、側室候補の女性が何人も居ましたわ。


わたくし当時はほんの子供でしたけど、

ファイズお兄様の女性に対しての、

そういうところは…

あまり好きではありませんでしたわ」


 そ、そうなんだ…?

 確かに25歳童貞の俺とはまるで違うなあ…。

 でも国を治める王を継ぐ立場の第一皇子なら、

 そういう広い女性の付き合い方も、

 さもありなんということなのだろう。

 生粋の一般人である俺には解らない感覚ではあるが。


「それに引き換え、

ケイガお兄様はわたくしのアプローチひとつひとつに

細やかに心揺らして下さいますし、

わたくしを初め、女性たちへの対応も誠実です。

ポーラは、ケイガお兄様のそういうところが…大好きなんです」


 ポーラ姫はそう述べると、

 その見れ麗しい尊顔を俺の顔に近寄(ちかよ)せた。


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