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420話 心の整理

 だが俺は既にポーラ姫を振っている。

 つまり兄である俺は、

 男である俺に勝っているのである。


 しかし男である俺はそれでもまだ諦めが付かないのか…

 ポーラ姫とのイケナイ想像までして、

 兄である俺と脳内でせめぎ合ったということである。

 だが俺は既にポーラ姫の告白を断って、

 彼女を振ってしまったという事実がある以上、

 もうその様なイケナイ想像の未来の可能性は皆無だというのに…。

 何という往生際の悪さなのだろうか。

 何て…情けない男か。


 だがそれは無理も無いだろう。

 所詮俺は…生まれてこの方、

 女性と付き合った事すら無い25歳童貞。

 ポーラ姫と言う逃がした魚は余りに大きすぎたのである。

 後悔の念にさいやまれるのも、

 後ろ髪引かれまくりなのも止む無しである。


 そもそも童貞彼女無しを抜きにしても…

 男として生まれた以上、

 見れ麗しい金髪碧眼巨乳美少女プリンセスという

 まるでアニメから抜け出て来たかのような

 超ド級極上ヒロインであるポーラ姫を振ったという行為を

 一切合切(いっさいがっさい)、一片の曇り無く後悔しない何てことはあるまい。

 そう…これもまたセカイの(ことわり)であり必然なのだきっと。

 だから俺は悪くない。


 …ただ俺は自分が兄としても男としても未熟であった為に…

 ちょっと後悔の規模が大きかったのかも知れないな。

 これは自分の弱さを認めるしか無いだろう。

 俺は自分の心の弱さを猛省した。


「…ケイガお兄様…

わたくしは…わたくしは…」


 自身の心の整理を付けた俺の前に、

 俺に告白を断られて意気消沈するポーラ姫の姿が飛び込んで来た。

 ああ…俺は何てことを。

 だがやむを得まい。

 これは兄として最善の選択だったのである。

 俺は愛しい妹に不幸になって欲しく無かったのだから。

 そして俺は兄として、

 傷心の彼女をいたわらなくてはならない。


 俺はポーラ姫の両肩を優しく抱き止めた。


「ごめん…ポーラ…

君の気持ちはとても嬉しかった…

でも俺には…君の本当の気持ちを知ってなお…

受け入れることは出来なかった…」


「お兄様…」


「黙って君の思いを受け入れていれば良かったのかも知れない。

でも俺はファイズ殿下では無いから、

ポーラに幻滅させることになっただろう。

そうなれば君にとても辛い気持ちと後悔をさせることになるだろうから」


「…お兄様を幻滅だなんてそんなこと!」


「いやあ…

君が本当に思いを寄せているファイズ殿下との差異に幻滅しているのは

他らなぬ俺自身なのかも知れないなあ。

何しろ殿下はこの聖王国の全ての民に慕われる

まさにこの国の兄とも言える存在だったみたいだから。

俺は殿下に兄としての格の差を感じずには居られないんだ」


「…格の差だなんて、

そんなことは決してありませんわ!」

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