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419話 兄心と男心

 ふう…やってしまった。

 俺はやり遂げてしまった。

 ポーラ姫の思いを、好意を、告白を…

 俺は断った。

 恋愛的に言うのなら、

 ”振った”ということである。


 生まれてこの方、

 女性と付き合ったことも無い

 彼女いない歴25年であり

 25歳童貞のこの俺が…


 金髪碧眼巨乳美少女プリンセスという、

 まるでアニメや漫画やゲームから

 そのまま抜け出て来たかのような

 超ド級ヒロインであるポーラ姫を”振った”のである。


 …えっ?

 惜しいと思わなかったのかって?

 そんなこと…思っているに決まっているだろうああああああんんんーー!!


 あんなに可愛くてお姫様でおっぱいも大きいんだぞ!

 そんな子に告白されたのにお断りするだなんて…

 勿体無いと思うに決まっているだろ馬鹿!!


 はあ…

 もし…

 彼女の告白を受け入れていたなら…

 俺はポーラ姫を”彼女”に出来て…

 付き合うことが出来たんだろうなあ…

 二人きりでデートして!

 手を繋いで歩くとか!

 そ、そそそそして、

 キ、キスとか!!

 そそれで彼女の大きなおっぱいに触れて…撫でて…揉んで!

 そ、そ、そしてもっとイケナイことを!

 彼女の未開の花園を…

 そして俺はどどど童貞卒業をふおおおおおおおーー!!

 …はっ!?


 俺はポーラ姫との有り得ない未来を

 そこまで想像したところで…

 自分の脳裏の中で優羽花(ゆうか)がジト目で、

 静里菜(せりな)が悲しい目で俺を見つめていることに気付いた。


 ち、違うぞ二人とも!

 これはあくまで想像だし!

 実際俺は何もしていない!


 しかし俺の脳裏の妹歴16年の愛しいふたりの妹は

 俺への厳しい目線を止めようとしない。


 仕方が無いだろう!

 ポーラ姫は俺の人生25年の中で、

 今迄あったことない超俺好みの女の子なんだ!

 だいたいあんなアニメみたいな子が実際に出て来て、

 更には『好き』だ何て、

 告白をされようものなら…

 男はみんな正気を保ってなぞ居られる訳無いだろう!

 そうこれは必然なんだよ!

 俺がこうやってポーラ姫相手にイケナイことを想像するのも

 セカイの必然って奴なんだ!

 だから俺は悪くない!!


 俺は脳内の優羽花(ゆうか)静里菜(せりな)に向けて必死に弁明した。

 彼女たちは限りなく本人たちに近い思考を持ってはいるが、

 あくまで16年間共に過ごして来た記憶を基に

 俺が作り出した”幻影(イメージ)”である。

 つまりこれは二人の幻影(イメージ)を作り出した、

 他らなぬ自分自身に対する弁明でもあるのだ。


 ポーラ姫は魅力的な女の子である前に、

 俺の愛しい妹なのである。

 兄は妹にやましい気持ちを抱いてはならない。

 妹は慈しんで愛するものであって、

 性的な行為などもっての他なのだ。

 これが俺の兄としての絶対的な心得。


 なのに俺は彼女と付き合えたら良かったのにとか、

 兄として矛盾した想像を今しているのだ。

 そんな俺に対して突き刺さる、

 ”幻影(イメージ)”の優羽花(ゆうか)静里菜(せりな)の厳しい目線。


 つまりこれは…

 兄である俺と、只の男である俺が

 脳内で妹たちの幻影(イメージ)を通してせめぎ合っているのだ。

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