404話 回避不可
「それはそれとして…
わたしは優羽花のことが心配です。
兄さん、前にも言いましたけれど
優羽花のことは
ちゃんと気に掛けていますか?」
「えっ?
ええと…
特に問題は無いと思うんだが」
俺はこの異世界に来てからの、
優羽花との付き合いを
静里菜に聞かせた。
元の世界と何ら変わらない。
互いに歯に衣着せぬ、
兄と妹の付き合い方である。
「そうだなあ、強いて言うなら
優羽花は元の世界の時よりも
俺に対してちょっとしおらしいと言うか大人しいと言うか…
本来はもっとツンツンしていた気がするけどなあ。
でもまあ此処は見知らぬ異世界だし
周りは知らない人ばかりだしなあ。
ここは自分の我を抑えて上手くやっていこうと考えて、
その延長線で俺に対しても
しおらしくなっているのかも知れないかなあ」
「兄さん。
前にも言いましたけれど、
優羽花は、ああ見えて脆いところがありますから。
見ず知らずの異世界では
色々と心が参って弱気になっているのかも知れません。
どうか気を掛けて上げて下さいね。
わたしも後で優羽花の精神世界へ跳んで、
気遣いはしておきますから」
「わかったよ静里菜」
優羽花が弱気というのは、
俺にはまったくそうは見えなかった。
だが…年頃の少女の心境など俺にはわかろうはずもない。
そこは同い年であり16年間共に俺の妹として過ごしてきた
静里菜のほうがわかるというものであろう。
俺は彼女の言葉に従う事にする。
「ざっとになったけど、
これで俺達の異世界における状況については
理解できたかな静里菜?
何かわからないことはないか?」
「はい、兄さん
異世界の事については大体は理解出来ました」
流石は察しの良い我が妹である。
俺はかなり簡潔な説明であったと思うのだが、
地の頭の良さで補って理解をしてくれた様である。
「でも兄さんの異世界での新たな妹達については、
もっと詳しく話を聞きたいです」
静里菜は
にこやかに笑みを浮かべたまま俺に言葉を述べる。
だがその瞳が一瞬、鋭く光ったのである。
おそろしく強い眼力。
俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「ええとなあ静里菜…
俺はだいぶ長い時間を話した様に思えるんだが、
この精神世界を構築し維持している
巫術の効力時間はまだ大丈夫なのか?
もしあんまり時間が残っていない様なら、
静里菜のほうの状況を確認したいんだが」
「そうですね、
前の様に敵性存在の干渉もありませんし、
この精神世界は安定していますけれど…
かなりの時間が立っていますから、
わたしのほうの状況をお話したほうが良いですね。
…それでは異世界での新たな妹たちについてのお話は
後日の機会と言う事で」
…んーんんッ!?
時間が無いというドサクサに紛れて、
異世界の妹たちについては
有耶無耶にはしてくれませんでしたか静里菜サンッ!?
流石は16年来の良く出来た我が妹である…
下手なごまかしなど無意味!
都合が悪い時は何とか上手く言いくるめて来た
優羽花とはまるで違う…。
流石は静里菜、妹の格が違った。




