403話 静かな怒り
「わかりました兄さん、
この三週間、
とても大変だったのですね…」
「…まあ、な」
「それにしても兄さん…
わたしと優羽花を含めて、
妹が14人にもなったのですか?」
「…うっ」
俺は静里菜の前に正座をして恐縮した姿勢になっている。
おかしい…
俺が異世界で体験した出来事を
彼女に話し始めた最初はいたって普通の姿勢だった筈のに、
どうしてこうなった?
俺が話す異世界での出来事の内容の時空列が進んで、
それに比例して新たに妹が増えていく度に…
静里菜の周りの雰囲気が
だんだん冷え込んできた様な気がして…
比例して俺が委縮して肩身が狭くなっていったのである…。
「あの…静里菜さん?
何か…怒ってられますか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
思わず敬語である。
「別に何も怒ってはいませんよ兄さん」
静里菜はそういってにっこり微笑んだ。
彼女の背後に修羅の類が見えたような気がした。
「でも兄さんが異世界で女性に
おモテになるのは仕方が無いです。
だって兄さんは元居た世界でも、
とてもカッコ良かったですから」
「そ、それは…
ちょっと買いかぶりだと思うぞ静里菜…」
いやだって静里菜。
俺は生まれて25年の生粋の童貞なんだぞ?
間違ってもモテるなんてことは無いと思うんだがそれは。
「はあ…わたしがあのまま異世界に留まっていれば…
元居た世界と同じように、
わたしと優羽花で兄さんの側に常に張り付いて
他の女性など近付けさせはしなかったのですけれど…」
ん…?
今何か不穏な言葉を聞いたような…??
いや静里菜は心穏やかな優しい妹。
そんなことする訳無いだろいい加減にしろ俺!
「それにしても…
ポーラ姫様という方にはわたし、
一度話をする必要がありそうですね…。
他の女性と比べても明らかに兄さんへのスキンシップが過剰過ぎます。
それに…兄さんがポーラ姫様について話される様子から、
兄さんもまんざらでは無い様子。
ポーラ姫様はきっと…
わたしや優羽花には無い豊かなモノをお持ちなのでしょう…」
静里菜はそう述べると、
自身の起伏の無い胸の箇所をさわさわと撫でた。
…ぎくぅ!
そ、そんな…俺は、ポーラ姫について話す時も
平静さを保って喋っていた筈なのである。
もしかして…
俺自身が気が付かないレベルで
顔が緩んでいたとでも?
声に喜々が入っていたとでも?
そうだとでも…言うのか…?
俺のポーラ姫に対しての
まんざらでも無い気持ちを見事に見透かした
静里菜の慧眼に俺は驚愕した。
…静里菜、恐ろしい子!




