表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

401/556

401話 反攻する兄

「兄さん。

苦しそうな顔…。

まだ、お疲れなのですね…。

此処はわたしが巫術(ふじゅつ)で生み出した精神世界。

今このセカイに居るのはわたしと兄さんだけです。

ですから気兼ねなく休んで、

ゆっくりと疲れを癒してくださいね」


 静里菜(せりな)はそう言って俺の額を優しく撫でる。

 まるで子供をあやす母親の様に。

 彼女の柔らかい太ももが、

 彼女の柔らかい手の感触が、

 彼女の可愛らしい声が、

 その全てがとても心地良い。


 自分の兄のしての至らなさ、ふがいなさ、

 その他もろもろの感情が入り混じって、

 俺の荒ぶった心が…

 静里菜(せりな)によって急速にほだされて、

 穏やかになっていく。


 静里菜(せりな)はいつもにこやかで平常心、

 たいてのことでは動じない、

 どんなことでも受け止めてくれる

 出来た子であった。


 だけど…どんなに人としての器が大きくても、

 彼女はあくまでも俺の妹なのである。

 だから俺は今まで静里菜(せりな)とは、

 あくまで頼れる兄として振る舞い

 接してきたのである。


 だが今の俺は…静里菜(せりな)に身体を預けてしまっている。

 兄である俺が妹である静里菜(せりな)に可愛がられているのである。

 兄と妹の関係が逆転している。

 兄である俺が妹の静里菜(せりな)に頼っている状態だと…?


 カエデに続いて…

 妹歴16年の静里菜(せりな)にまでも俺は…

 バブみを感じてオギャるのか!?


 ち違う!

 そんなことは断じてッ!!

 そんなことはあってはならないんだーー!!


「う、うあああああーー!」


 俺は声を上げると、

 彼女の手を遮って、

 膝枕からころりと横回転して滑るように高速離脱する。

 そして跳ね跳ぶように身を起こして瞬時に立ち上がった。


「兄さん?

急にどうしたんですか?」


 静里菜(せりな)は、

 俺が突然大声を上げながらニンジャの様な素早い動きで

 瞬時に立ち上がったことに驚きつつも、

 彼女自身も追って立ち上がり俺を心配する言葉を掛けた。


「違う、違うんだ…

俺は…俺は…俺は!

兄なんだ、兄さんなんだ!

鳴鐘 慧河(なるがね けいが)は…

静里菜(せりな)の兄さんなんだ!

兄として譲れないプライドがあるんだああああーー!

う、うおおおおおおーー!

静里菜(せりな)あッ!」


「きゃっ!?

に兄さんっ??」


 俺は静里菜(せりな)の身体を抱き締めた。


「あン!

急に兄さんったら…

そんなにも強くッ?」


 俺は彼女を強引に、

 まるで奪い取るが如く抱きしめた。

 静里菜(せりな)に有無を言わせない様にわざと強く。


 そして彼女の後頭部に右手を添えて、

 優しく愛でる様に、

 撫でる。

 撫でる。

 撫でる。


 俺は高速で手を動かして、

 静里菜(せりな)の頭を撫でまくった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ