395話 連携退避
「…むむむ、ですわ!
ならば問いましょう、わたくしの姫騎士団!
その、ケイガお兄様にべったり顔を寄せている真似は一体何なのですか!
それはお兄様の望まれる清き兄妹の関係とはとても思えませんわ!!」
「これは只の”訓練”でございます。
兄様が姫様がされる様な女の色仕掛けに屈しない為の」
「私達は兄様がより強くなられるために、
不肖ながらもお手伝いをしているのです」
「く、訓練…?
それが訓練と申しますか…?
なかなか言うでは無いですか、
わたくしの姫騎士団。
ふふふ…それならば、
わたくしもその”訓練”に加わっても宜しいのではありませんか?」
「姫様、それはなりませぬ。
我等は騎士ゆえ分をわきまえておりますが、
貴女は生まれながらの王者ゆえにその欲望に際限が無い。
つまり加減を知りません故に」
「訓練と言いつつも姫様の思いのままに、
”本番”までしかねませんわ。
ですから、ここは自重なさいませ姫様」
「ふふふ…
流石はわたくしの自慢の姫騎士団!
主であるわたくしにも一歩も引かず堂々とした物言い!
これこそがわたくしが求めし配下の者たち、見事ですわ。
ですが、わたくしも此処は譲れませんわ!
それでは此処は手早く、
力勝負で決めるといたしましょうか?
勝ったほうがお兄様の身を預かるという事にしましょう」
ポーラ姫のその身体の周囲に魔力の光のオーラが巻き起こる。
俺の『見通しの眼鏡』に映る
ポーラ姫の魔力数値が急激に上昇した。
おおお!?
ポーラ姫の魔力数値が300近くまで上昇したぞ!
この魔力の高さは光の勇者である優羽花の初期魔力数値を越えている?
「姫様、何という…これ程の魔力とは」
「この溢れる魔力!
お兄様と身も心も一つになりたいと思うわたくしの純粋な思いが
更になる力を目覚めさせたという事ですわ!
さて行きますよ姫騎士団。
以前の勝負の時は負けましたが、
今のあなた達は団長のシノブがいません。
たったの二人で、大きく魔力増強した今のわたくしを止められますか!」
「増動力!」
イチョウが身体能力強化魔法を行使する。
そしてクレハは俺から身体を離すと高速で跳びポーラ姫とぶつかった。
姫の杖と女騎士の剣が交差して激突した。
「イチョウ、私が姫様を押さえているその隙に」
「了解ですわクレハ」
イチョウはポーラ姫に掛けられた身体能力低下魔法で
全く動けないままの俺の身体を抱えたまま、
ぶつかり合うポーラ姫とクレハと反対側へと駆けた。
「シダレ、カエデあとは頼みますわ!」
「任されたよ!」
「了解ですー」
イチョウは其処に待っていたシダレとカエデのふたりに俺を託すと、
クレハに助勢すべく来た道を戻って駆けて行く。
入れ替わりに俺の身体を抱えたシダレとカエデは物凄い速度で駈けた。
流石は姫騎士団最速の二人。
あっと言う間に俺の視界から、
イチョウ、クレハ、ポーラ姫の姿が小さくなって見えなくなった。
シダレ達は王宮内を駆け抜けると、とある城壁の前でその脚を止めた。
するとその壁の一部がごとんと音を立てて開いた。
…隠し扉?
俺は扉の奥の部屋に運ばれる。
そこには姫騎士団の最年少、ツツジが居た。
「…兄様、お待ちしてました…。
…さあ、こちらにどうぞ…」




