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393話 間髪入れず

魔閃光(マナフラッシュ)!」


 突如魔法の言葉と共に部屋の中が閃光に包まれた。

 これは以前に見た目くらましの魔法!?


 次の瞬間、俺の両肩はふわりと抱えられて

 部屋の外へと飛び出した。


 これは…?

 俺は自身の左右を見やった。

 其処には姫騎士団(プリンセスナイツ)のクレハとイチョウが俺を肩から抱えながら駆けていた。


「クレハ!?

イチョウ!?

俺を助けてくれるのか?」


「私達はケイガ兄様の妹」


「大切な兄様に貞操の危機が訪れればお助けするのが当然ですわ」


「て、貞操って…

でも助かった、ありがとう。

しかし、良いのか?

二人ともポーラ姫を守る姫騎士団(プリンセスナイツ)だろう?

そんな君たちがポーラ姫に逆らって俺を助けても?」


「ケイガ兄様の望みは、

私達妹たちと清く正しい兄妹の関係でいること。

ですが姫様はそんな兄様の望みを一切無視して自身の欲望を優先しております。

どちらが正しいかは火を見るより明らか」


「そして間違った(あるじ)(いさ)めるのも、配下の役目ですわ兄様」


 団長のシノブさんを始め、姫騎士団(プリンセスナイツ)の皆は

 盲目的に上司に従う従順なイエスマンではなく、

 意見し、物言う部下なのである。

 俺はそのことを改めて認識した。


「それにしても兄様。

姫様ごとき小娘にちょっと色仕掛けされただけで、

たじたじになっておられる様ではまだまだですよ?」


 クレハ…こ、小娘って!?

 シノブさんもそうだけど姫騎士団(プリンセスナイツ)の皆は

 上司であるポーラ姫にちょっと遠慮と言うか

 容赦無さすぎなんじゃないですかねえ?

 言葉にもう少し何と言うか…手心と言うか。


「女の色仕掛けは殿方には命に関わりましょう。

ですから私がこうやって克服のための訓練を

時々お手伝いしておりますが、

やはり…私如き無骨な女では効果が無いのでしょうか?」


 クレハはそう言うと俺の頬に自身の頬を摺り寄せた。

 うああっ…気持ち良ッ!

 だからあ貴女は確かに武人肌の女性ですけれど、

 凄く美人さんなんですからね!

 そんな女性に頬をすりすりされるのが慣れる訳ないでしょうがあ!?


「クレハ…兄様にそんなことをしていたのですか?

貴女は堅苦しいように見えて油断も隙も無いですわね」


「イチョウ、これは兄様に更に強く逞しくなって頂きたいだけで

特に他意はありませんよ」


 …いやいやそんなことしても

 俺は強くも逞しくもなら無いと思いますよ?

 俺の股間の分身のナニカが逞しくなるだけなのでは?


「まったくクレハは…

でもその訓練で兄様が色仕掛けを

克服出来るのでしたら一理ありますね。

それでは不肖ながらこのイチョウも、

その訓練に加わりましょう。

…失礼しますケイガ兄様」


 イチョウはそう言うと、俺の頬に自身の頬を押し付けた。


 う、うああ…な何この美女騎士二人の顔サンドイッチ!?

 こんな訓練をし続けようものなら…

 俺の兄としての心が理性が尊厳が崩壊してしまう!


 一難去って一難!

 ポーラ姫の手から逃れた俺だが、

 新たな問題が間髪いれずに襲って来た。

 助けてえ!

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