392話 あれは嘘です
「ポポポポ…ポーラあ!?」
俺は情けなくも素っ頓狂な声を上げてしまった。
突然の彼女からのキス!
唇では無く頬だけどキス!!
である。
それで驚かない筈が無いのである。
「ふふっ…本当は唇同士が良いのですけれど、
それはやはり殿方からして頂かないといけませんわ」
俺は既視感を感じた。
かつて俺の妹のひとりである静里菜が
ほとんど同じことを言っていた事を思い出した。
だがあの時と違うのは、
俺は心の動揺を隠せなかったことである。
静里菜は妹歴16年のベテラン妹、
楚々たる和風巫女美少女!
だが胸は板!
対してポーラ姫は
妹になって三週間しか立っていないまだまだ新人妹、
金髪碧眼美少女プリンセスという
俺が元居た世界では有り得ない超ド級ファンタジーヒロイン!
そして何より…おっぱいでかい!
俺は生粋のおっぱい星人、
そんな俺好みの巨乳美少女プリンセスであるポーラ姫から
頬とは言えキキキ…キス何てされ様ものなら!
平静のままでいられる訳無いだろう!
俺はおっぱい星人であり、
生まれて25年以来の筋金入りの童貞なんだいい加減にしろ馬鹿!!
俺は動揺を隠しきれず、
顔を真っ赤にしてしまった。
これは手で隠すなり後ろを向くなり
この場を離れるなりすればごまかせることもあるだろう。
だが今の俺はポーラ姫が行使した
身体能力低下魔法の効果で身体が全く動かない。
つまり俺は自身の動揺の原因である他ならぬポーラ姫に、
この慌てふためいている自分を完全に晒しているのである。
「…うう…」
俺は彼女に自身の恥ずかしい状態を見られて
さらに恥ずかしくなってしまう。
真っ赤になった顔だけでは無く、
身体中が熱い。
まるで燃える様である。
「…ああ…
お兄様…
可愛いですわ…」
そんな俺を見てポーラの目が怪しく光る。
以前に何度か見せたドSの気配。
俺は身の毛がよだつのを感じた。
そして彼女のたおやかで
か細い手が俺の両頬に添えられた。
「…お兄様。
さきほど唇の接吻は殿方からして頂かなければ…
とわたくし申しましたが、あれは嘘です」
「…ファッ!?」
「だってわたくし…
とても恥ずかしがっているケイガお兄様を見て、
お兄様がとても愛おしくなって…
もう我慢できなくなってしまいましたもの…
それではお兄様…失礼いたしますね」
「ちょっまっ!?」
ポーラ姫はその可憐な唇を俺の唇へと近付てくる!
俺は魔法で身体は全く動かない。
これってもしかしなくても絶体絶命なのでは!?
優羽花!
静里菜!
ににに兄さんは大変なことになってるぞ助けてえ!!




