第388話 まだ慌てる時間じゃない
「えっ…えっ…
つまり…君は…
俺に”わざと見せる為”にそんな格好で部屋に…!?」
こくりと頷くポーラ姫。
それに”子孫繁栄の衣装”って…
そ、それって夜這…
ポーラ姫は俺にそんな大胆過ぎることを…?
いや落ち着くんだ俺ここは素数を数えるんだ!
まだ慌てる時間じゃない。
「で、でも…
さっきポーラはさっきとても恥ずかしがっていたじゃないか?
それじゃあ…おかしくは無いか?」
俺は自分の心の動揺をごまかす様に、
彼女の辻褄があってない行動を指摘した。
「だ、だって…
実際にこんな格好でお部屋に伺って…
お兄様にあんなにまじまじと見られたら…
わたくし、とても恥ずかしくなって…
どうしようも無くなってしまいましたの…」
ポーラ姫は顔を紅潮させながらそう述べると、
再び両手で胸と下腹部を覆い隠した。
うっわ可愛い!
男とはかくも面倒くさい生き物である。
堂々と裸を魅せ付けてくる姿勢より
恥ずかしがって隠すほうが
遙かに断然に心に来るのである。
ズキュウウウウン!
俺はポーラ姫に完全に心を撃ち抜かれてしまった。
何しろ彼女の裸に等しい姿を凝視してのぼせ上ってからのコレなのである。
畳みかけるかの様な二段波状攻撃!
俺の股間の分身はショート寸前!
今すぐ暴発したいの!
である。
まあ実際この場で暴発しようものなら
俺は兄としても男としても終わりである。
だから今の俺は…
『地ノ宮流気士術・四の型、瞑想』を行使して、
男の昂ぶったナニカを必死に抑え込んでいるのだ。
『瞑想』は本来、
心を静め一切の雑念を無くし高めた気を、
傷口に集中させて回復を図る気士術。
だが俺はこの異世界に来てからというもの、
回復技としてよりも”心を静める”という部分の効力で
この技をとても重宝しているのである。
この異世界エゾン・レイギスに飛ばされてれてからというもの
俺には新たな妹が次々と加わった。
彼女たちの誰もが見れ麗しい美少女美女たち。
童貞歴25年の俺にはとても眩しい存在である。
そんな彼女たちが俺が兄を慕う妹として
魅惑的な姿で俺に寄り添ってくる事など
今迄に何度あったかわからない。
もはや日常茶飯事でないだろうか?
俺はもう数えるのを辞めた。
もし俺にこの『瞑想』という心を静める技が無かったら…
とうの昔に終わっていたんじゃなかろうかとは思わずには居られない。
師匠…この技、とても役に立ってます!!
ありがとう師匠!
そして気士術を生み出し発展させて来た
地ノ宮流の先達の気士の方々もありがとうございます!
俺は静里菜の父上である師匠を初め、
歴代の地ノ宮流の気士に深く感謝した。




