第386話 神仏照覧
「み…み、見え…」
俺はおそるおそる目線を下げていく
スケスケのネグリジェ越しに見える
ポーラ姫の美しい肢体。
なだらかなお腹のライン。
おへそ。
腰のくびれ。
魅惑の鼠径部。
そしてついに俺は…
ポーラ姫の秘密の花園へと視線を下ろそうとしたその時、
白菊の様な美しい手が現われて花園を覆い隠した。
「えっ…?」
ふっと我に返った俺は視線を引いた。
見ればポーラ姫が唇をきゅっと噤み、
顔を真っ赤に紅潮させながら、
その両腕で自身の胸と下腹部を覆っていた。
彼女の羞恥に満ちた状態を見て…
俺は…正気に戻った!
「う、うあああああああっーー!?」
またしても俺は絶叫した。
俺は何てことをしてしまったんだ…。
悔やんでも悔やみきれない。
しかし声を上げている場合では無い。
俺は今まっ先にやらなければならないことがある。
俺は着ている衣服を正し、襟元を整え、姿勢を正した。
そしてポーラ姫にに向かい正座をして、
手の平を地面に付け、額を地面に付くまで伏せた。
日本の古来からの謝罪礼法『DOGEZA(土下座)』の姿勢である。
「すまないポーラ!
俺は君の裸を凝視するという最低な行為をしてしまった!
本当に…本当に…申し訳ない!」
俺は頭を地面に付けながら謝罪の言葉を述べた。
そりゃあ俺が悪い!
何でポーラ姫がスケスケのネグリジェ姿で
部屋に入って来たのかわからないけど、
彼女のほぼ裸の姿を穴が開くほど凝視した俺が悪いに決まっている!
俺はとにかく地面に頭を付けて謝り続ける。
ああ…こうやって土下座するのは巫女服姿の静里菜との再会の時以来か。
静里菜!
あの時兄さんは欲望のまま振る舞っては行けないと
散々思い知って反省した筈なのに、
また土下座する羽目になってるぞ!
だが静里菜、
リリンシアの時とは違うんだ。
あいつは俺が苦手とするタイプの性悪女!
悪い精霊!
だけどあんな女でもその裸を見てしまえば
俺は心に弱みを持ってしまうだろう。
だから俺はあの時、必死に目線を逸らした。
しかしポーラ姫は云わば正統派の超ド級ファンタジーヒロイン!
そんな彼女が裸で部屋にやって来るイベントが起きれば…
男の子は黙って両目をはっきりと広げてご覧になるしかないのだ!
これは言うなれば神仏照覧!
だからわかってくれ静里菜あ!
…でも、こんな醜態を晒してしまった俺は
ポーラ姫に嫌われてしまうことは確定だなあ。
麗しき姫君である彼女に、
ゴミを見るような軽蔑の目で見られてしまう…。
ははっ…想像しただけで全身の血の気が引いていきそうである。
だがそれも止む無し!
俺はそれだけのことをしでかしたのである。
土下座とは相手に対して完全に無防備になることで、
謝罪の相手に生殺与奪の権を与えて許しを請う行為である。
だが例え許されなくても俺はとうに覚悟は出来ている。
さあポーラ姫!
貴方の麗しき肌を調子に乗って見まくった
この愚かな男を処断してくれ!
むしろ殺して!
俺は頭を下げたまま彼女の裁定の時を待った。




