第383話 異世界ノート・聖王国
俺は自室に戻ると、
先程まで謁見の間で行われていた聖王国魔竜軍同盟会議にて
新たに入手した異世界エゾン・レイギスの情報を
改めて整理することにした。
会議中に書き留めて置いたメモを俺は取り出すと、
この異世界に来てから三週間、ミリィの下で学んだこの世界の知識を
書き溜めていたノート、通称『異世界ノート』と並べて見比べた。
そしてメモの内容から新たな情報を異世界ノートに追加記載していく。
先程の同盟会議で、
新たな異世界情報をワッと洪水のように浴びせられた
我が妹、優羽花は、
頭がオーバーロードを起こして今は部屋で休んでいる。
俺にはゲームやアニメで得た異世界ファンタジー知識が
ある程度あり理解は出来る基盤があった。
だが優羽花にはそれが無いのだ。
せいぜいドラ〇エぐらいだろう。
そして我が妹は運動神経は抜群だが、余り頭を使う事が得意ではない。
だからこの状態は仕方が無いのだ。
ここは兄として妹を支える所である。
俺はエゾン・レイギスの知識を新たに入手する度に
自分の中で一度わかりやすく整理してから、
優羽花に自分の復習も兼ねて読み聞かせているのだ。
今の情報整理もいつもと同じ要領である。
俺は異世界ノートに新たな情報をまとめ上げていく。
・エクスラント聖王国
俺と優羽花がお世話になっている国。
エゾンリア大陸中心に有る、
魔界と地上を行き来する中央域の周囲に隣接する五つの大国のうちのひとつ。
王族は500年前に大魔王を倒し人間界を救った光の勇者の血を引いており、
稀有な魔力属性である光属性を持って生まれることが多い。
ポーラ姫もそのひとりである。
その領内には光の精霊が住まう”光の神殿”が有る。
召喚された異世界人に精霊が作った専用武器を授ける神殿である。
召喚された異世界の戦士を補佐するように精霊から使命を与えられている。
異世界人は聖王国が保護して魔族と戦う為の知識、装備を与える。
その身分は聖王国預かりになる為、
異世界人は全て聖王国に所属しているに等しい。
この世界の人間国家の中でも特に精霊との結び付きが強い国家。
500年前に大魔王を倒した光の勇者はその強大な力を恐れられて
世界中の人間から疎まれ恐れられ殺されかけた所を
当時のエクスラント聖王国が保護して王として迎えた経緯がある。
王族が光属性魔力を持って生まれることが多いのも、
領内に光の神殿があるのも、
精霊から使命を与えられて全ての異世界人を抱えているのも
全ては500年前のことから始まっている。
エクスラント聖王国は光の精霊から与えられた使命に真熟に取り組んで
人間国家の中で先頭に立って魔族と睨みあってきた国家。
500年前の人間全体の勇者への裏切りを見た経緯もあり、
自分達がまず率先して手本となって
人間を滅ぼうとする魔族と戦わなければならないという自負がある。
だが聖王国以外の四つの大国は
500年前に大魔王を倒し人間を救った勇者を
殺そうとした自分達の愚かな行為を棚に上げ…
いやその記録すらも意図的に消し去った…?
聖王国は精霊にえこひいきされた国であり、
光の勇者はたぶらかして自分達の血に取り入れたという認識を
四大国は共有している。
この四大国は大魔王が滅んだあとに出来た新興国であり、
支配者層が入れ替わっている。
つまり色々と都合が悪いことを率先して切り捨てた結果、
この様な考えに至ったのであろう。
聖王国の領内には精霊たちが作った
強力な異世界人専用装備を所蔵している光の神殿が有る。
そして強力な魔力を持つ異世界人は実質全て、聖王国に所属している。
王族は稀有な光属性魔力を持っていることが多い。
これらの事は四大国に取ってはやっかみの対象である。
隙あらばこれら全てを奪うべく虎視眈々と狙っている。
だが人類の敵は魔族である為、
正規軍を投入しての正面からの聖王国侵略は控え、
様々な謀略を用いて来る。
エクスラント聖王国の周辺国家は問題国だらけだった…?
所詮人間の敵は人間だよ、という事なのかも知れない。




