第376話 王道?
「お、王道…?
”ラスボス”の言葉の意味はよくわからないけれど…
つまり兄君様の世界では
大魔王には少数精鋭で挑むのが王道なのかい??」
ミリィがきょとんとした目で俺を見つめながら問いかけた。
「うん…まあ、そういうことになるかな?」
RPGゲームでのだけどな!
と俺は心の中で付け加えた。
つまりゲーム世界で王様が魔王相手に軍を動かさないのは、
なるほど他の人間国家に攻め込まれる隙を見せない理由もあったのかと
俺はミリィの話を聞いて思ってしまった。
「う…うん…
兄君様の世界では
そういうものなんだ…?」
まあ俺が過去に地ノ宮流気士術の気士として
人に仇名す妖と戦っていた時も、
俺と師匠と静里菜の三人で
鬼の軍団が巣食う鬼ノ城へと乗り込んだものである。
ゲーム云々は抜きにしても少数精鋭で敵のボスに挑むのは、
あながち間違っていないだろう多分。
「なるほどケイガ様。
我が聖王国からは対魔族戦に特化した少数精鋭を魔界に派遣して
聖王国本軍は国土の防衛専念するという事ですね」
驚いているミリィの替わりにポーラニア殿下が俺に言葉を返した。
「対魔族戦闘と対人間戦闘では戦い方も戦いの属性の相性もまるで違います。
闇属性の魔族に有効的な光属性を持たれるユウカ様、ケイガ様、ヒカリ様が
魔界へ向かわれるのは正しい選択でありましょう。
それではケイガ様たちと同じ光属性を持つ身としてこのわたくし、
ポーラニア=ウィル=エクスラントも
魔界に同行いたしますわ」
「えっ!?
ポーラ姫も一緒に行くのか?
それは流石に駄目だろう!」
俺は彼女の突然の発言に驚きの余り、
殿下呼称を飛ばして
いつも通りの呼び方で呼んでしまった。
「どうしてですか…ケイガお兄様…?」
俺がいつもの呼び名で呼んだことに呼応してか
彼女も俺をお兄様と呼んだ。
先程までの毅然した王者としての口調ではなく、
まるで小鳥の様な可憐な口調。
か細い妹モード全開で俺に問いかけた彼女に、
俺はどぎまぎしながらも言葉を返す。
「いやだって…ポーラ姫、いやポーラニア殿下?
貴女はこの聖王国の国王代理なんだ。
実質的なこの国のトップと言ってもいい。
そんな貴女が敵の本拠地に行くなんてことは…」
「ケイガお兄様、戦いは正面戦闘では無く背後からの援護も不可欠ですわ。
わたくしは回復・防御魔法が得意です。
光属性魔法でお兄様たちを援護いたしますわ。
わたくしはケイガお兄様の妹として力になりたいのです」
うっ…正直それはとても有難い。
俺は先の国境の町クラシアの戦いで
単騎で深く斬り込んだ為に深手を負った経緯がある。
ポーラ姫が居てくれればかなり心強いだろう。
でも…。
俺はあの戦いで大魔王の強さを思い知った。
正直なところ、背後のポーラ姫に気を配りながら
大魔王や魔界五軍将といった高位魔族と戦う余裕は無いのである…。




