第375話 その答えは出ている
ミリィから語られた内容は衝撃的な内容であった。
エクスラント聖王国と他の人間国家との間にはそんな事情があったのか…。
しかし聖王国が他国に追い込まれているその理由はかなり理不尽である。
そして何より…
500年前に地上をそして人間を滅ぼそうとした大魔王を倒し、
人間の世界を救った筈の光の勇者が
救った人間に追われて殺されかけたなんて…
これでは勇者は何のために戦ったのかわからないじゃないか!
俺の心は怒りに震えた。
だが、当時の聖王国は勇者を受け入れてくれた。
そして勇者を聖王国のトップとすることで誰も手を出せない様にしたのである。
これは一歩間違えば聖王国も他国に滅ぼされかねなかったであろう。
何しろ勇者は当時の人間の国々全てから迫害を受けていたのだから。
だがそれでも、聖王国は勇者に手を差し伸べたのである。
これは今回の話での唯一の救いであったと思う。
むしろ理不尽でどうしようもない生き物である人間にも、
まだ救いがあったというべきであろうか…。
俺も怒りを抑えて何とか心を落ち着かせることが出来た。
人間とは所詮、業の生き物である。
少なくとも俺は元の世界での苦い経験から、
そういうものだと割り切っている。
俺が元居た世界、地球。
俺が今いる異世界、エゾン・レイギス。
どちらの人間もその本質は同じでは無いかと俺は感じた。
…こんな人間に護る価値はあるのか?
何者かが俺の声で俺の心に問いかける。
だがその答えはとうに出ている。
俺が異世界に飛ばされたあの日、
赤い夕陽に誓ったあの時に。
その答えは今でも揺るがない。
俺は妹たちを護る。
そして妹たちが住まう聖王国を。
すなわち地上も人間界も。
大魔王を倒して護るんだ!
俺は心の整理を付けると、ミリィの問いに答えるべく口を開いた。
「つまりミリィ。
君の話だと魔界へは聖王国の全戦力すなわち軍を動かすことを考えているのか?」
「それはそうなるだろう兄君様?
敵は大魔王だけでは無くその配下の魔界五軍将、
その配下の魔族軍が多勢に居るんだ。
個でも人間を圧倒する魔族の軍相手にこちらも軍を動かさない理由は無いよ」
「それならいっそのこと、
聖王国の軍は防衛のために全軍を地上に残せば良いんじゃないか?
魔界へ乗り込むのは俺と優羽花とヒカリだけでいい。
大体、強大な力を持つラスボスの大魔王相手には
少数精鋭で敵の本拠地に乗り込んで戦うってのが王道ってものだろうからなあ」
俺はRPGゲームでの王道的な展開をそのまま言葉にしてミリィに答えた。
俺はRPGゲームでの王道的な展開をそのまま言葉にしてミリィに答えた。




