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第370話 交渉のテーブル

「ミリフィア公爵…

もう少し何と言いましょうか…

わたくしたち人間に対して、

そして我が聖王国に対して手心と言いましょうか…」


 ポーラ姫殿下はミリィに対し色々と言いたげな視線で見つめながら言葉を掛ける。


「ん?

何かなポーラニア殿下?」


 きょとんとした表情(かお)でポーラ姫殿下を見るミリィ。

 持ち前の知識欲、探求欲といった

 学者の(さが)が全開となってしまった今の彼女には

 そういう気遣いの類は一切考えられない様であった。


「…いえ、何でもありませんわミリフィア公爵」


 ポーラ姫殿下は諦めたかの様に、はうと小さくため息をついた。


「ディラム殿。

貴殿の身を持っての証明で、

わたくしは人間と魔族の同盟の実現は可能と感じました。

さっそく同盟の交渉を始めましょう」


「ポーラニア殿下。

貴女の様な素晴らしき王の下でならば、

我は素晴らしい同盟を締結できると感じております」


「ではディラム殿、

こちらへどうぞ」


 ポーラ姫殿下は玉座から立ち上がると壇上から降り、

 謁見の間の中央にある大広間を指し示した。

 そこにはいつの間にかひとつの豪華なテーブルと

 ふたつの豪華な椅子が備え置かれていた。

 まさにその名の通り交渉の為の対等なテーブルという訳である。


 ポーラニア姫殿下と魔騎士ディラムは椅子に着席する。

 ミリフィア公爵はポーラ殿下の後ろに補佐としていう形で控えた。


 今ここに、

 魔族の五つの軍のひとつである魔竜軍と

 人間の国のひとつエクスラント聖王国との、

 魔族と人間との同盟の交渉が始まった。


 まず最初にディラムの口から

 魔竜軍がこの度の同盟を提案したその経緯についての詳細が改めて語られた。


 魔族の価値観は力が全てである。

 弱きものは強きものに従う。

 これが魔界における絶対的なルールといっても良い。

 だが、ただ力が強いだけでは駄目なのである。

 心の強さも伴ってなければいけない。

 心身共に強い存在だけが魔族を心底から従わせることが出来る。


 地下セカイである魔界は

 地上セカイである人間界と比べて環境的に過酷である。

 資源も豊富とはとてもいえない。

 そんな生きる上で厳しいセカイにおいて、

 自分の支配下の者の僅かな犯意は

 それだけで身を亡ぼす原因に直結するのだ。

 故に支配する側の魔族は常に節度を心掛けている。

 配下を心底から従わせることで叛意の芽を生やせない為に。


 だが500年前、そんな魔界の常識をひっくり返す出来事が起きた。

 魔界の奥底にひとりの魔族が生まれる。

 その魔族は生まれながらに強大な力を持っていた。

 そして魔界の各地方を支配していた魔王たちを全て倒し、

 有史初の魔界統一を成し遂げた。

 その魔族は魔王の中の魔王、大魔王を名乗った。


 だが大魔王には心というものが無かった。

 生まれながらにして他者全てを制する圧倒的な力を持っていた為、

 他者と対話をする事は必要が無い。

 自分の意に反する者がいれば力でねじ伏せてしまえば良かった。

 だから心が形成される機会すら無かったのかも知れない。


 他者は力づくで従える。

 それでも従わないものは全て殺した。

 それが大魔王の支配体制である。


 弱きものは強きものに従う、

 これが魔界の絶対的なルール。

 だが心無き大魔王に心底から従うものは少ない。

 魔界五軍将・魔竜将ガルヴァーヴは

 大魔王に表面的には従いながらも倒す機会を常に伺っていた。

 そしてついにその機会が現れた。

 大魔王を倒すべく異世界から召喚された勇者とその兄。

 最初は大魔王の命令通りに倒すつもりでいたが、

 彼等の予想以上の力を見て魔竜将は考えを改めた。

 共に大魔王を倒す同盟者として、

 彼等が所属するエクスラント聖王国と手を結ぶことにしたのである。


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