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第357話 同盟

「ほう…ナルガネ・ケイガ。

何やら一皮むけたと見えるな。

その眼差し、前よりも更に強くなったと我は感じる」


 ディラムは俺の心境の変化を察した様である。

 やはり察しが良いな、この魔族の騎士は。


「…そんなことは無いさ。

ただ、自分の愚かさを

しみじみ思い知らされただけだ」


「そうか。

ではナルガネ・ケイガ。

落ち着いた所で、

そろそろ本題に入らせて貰うぞ」


「だがディラム、

このまま話しても良いのか?

お前の言い分だと、

魔言将イルーラに筒抜けになってしまうんじゃ無いのか?」


 俺はヴィシルのほうをちらりと見ながら言葉を続ける。


「構わぬ。

これから話すことは

我の…そして我が(あるじ)、魔竜将ガルヴァーヴ様が

今此処で行うと決めた事。

誰が見ていようとは止める事は敵わぬ。


異世界の戦士ナルガネ・ケイガ。

我等、魔竜軍と同盟を組まぬか?」


「え、ええッーー!?」


 俺の妹になったばかりの獣人型(じゅうじんがた)魔族ヴィシルが驚いた声を上げた。


「ヴィシル、どうしてそんなに驚くんだ?

俺は魔族のセカイに疎い。

もしかしたら、魔族が同盟を結んだりするのは珍しかったりするのか?」


「ええっ、だってケイガ兄者サマ!

魔族同士ならともかく、

魔族と人間が同盟をだぞ!?

少なくともアタシは聞いたこと無いぜ!

この長い魔界の歴史でも無かったハズ…

それも魔界五軍将の中でも、

最も戦闘を好むという魔竜将ガルヴァーヴ様の魔竜軍から

兄者サマに同盟を求めて来るなんてこと…」


「なるほど、そういう事か…

でも前例が無いからって、

未来永劫有り得ない事なんてないからなあ」


「ほう…人間の貴様の方が全く驚かないとはな。

流石というべきだなナルガネ・ケイガ」


「別に大したことは無いさ。

俺は今日、様々な魔族たちと邂逅してその考えに触れた。

この異世界で学んだ人間側の知識では、

魔族とは話し合いなど成り立たない冷酷非情な種族とのことだったが

実際あった魔族達はそうでは無かった。

魔族は人間と同じぐらい、

いやそれ以上に柔軟な考えを持っているのでは無いかと俺は感じた。

そしてイルーラの話を聞くに、

魔界五軍将はその全てが大魔王の忠実な部下では無いということだ。

それなら魔族が人間と同盟を組むという考えも…

あるんじゃないかなと思った迄だ」


「ふっ、理解が早くてこちらの手間が省けるぞ。

ナルガネ・ケイガ。

それでは我等が貴様たちと同盟を結ぶ

その理由と目的も既に察しているということだな?」


「ああ、敵対していた者同士が手を組む理由は至極簡単、

どちらにも敵対する第三勢力が現れた時だ。

つまりこの場合は…

俺たちとお前たちの共通の敵、

大魔王を倒すために同盟を結びたい。

そういうことだろう?」

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