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第344話 魔族のセカイ

「ナルガネ・ケイガ。

その答えは至極簡単だ。

わが主たる魔竜将ガルヴァーヴ様が望むのは

地上の破壊では無く、

地上に魔族の領域を造り上げることなのだ。

人間は魔族がむやみやたらに殺しても良いでも無く、

ましてや根絶するものでは決して無い。

我等魔族に支配されるべきものなのだ。

故に我は、大魔王様の無様な”悪足掻き(わるあがき)”から

人間の町を守ろうとする貴様たちの手助けをしたということだ」


 ディラムはそう言葉を返すと

 その手に握っていた漆黒の剣を腰の鞘に納めた。

 俺たちと此処でやり合う気は無いということか。

 実際、刃物を思わせる様な端正な顔から戦意の類は感じられなかった。


 それにしても”悪足掻き(わるあがき)”か…。

 その物言いからして、

 ディラムも上司の魔竜将とやらも

 イルーラやヴィシルと同様に、

 大魔王の意思に只々盲目的に従っている訳では無いということだろう。

 大魔王自身も、自分の配下の魔族に対しては

 終始何の情も無く容赦無く使い捨てるという感じだった。


 魔族のセカイは一枚岩ではない。

 かなり複雑であるということを俺は改めて認識した。


「ナルガネ・ケイガ。

我は貴様に話がある。

だがその前に…妹の安否が気になるか?

ならば先に済ませるが良い」


 ディラムはそう述べると踵を返し後ろを向いた。

 俺が倒れている優羽花(ゆうか)とヴィシルに目線を配っていた事を

 察せられてしまった様である。

 こちらに後ろを向けたのは、

 戦う意思が無いという事を俺に改めて示したという事。

 俺は拳の構えを解くと、

 まずは近くのヴィシルに駆け寄って手を伸ばした。


「大丈夫かヴィシル?」


「ああ、ありがとう兄者サマ」


 ヴィシルの手を取って立ち上がらせる。

 よし、彼女は大丈夫だ。

 俺は続いて優羽花(ゆうか)に駆け寄った。


「大丈夫か優羽花(ゆうか)?」


「ちょっと疲れたけど…平気。

…ん!」


 優羽花(ゆうか)は頬を赤らめてそっぽを向きながら俺に向かって手を差し出した。


「やったな優羽花(ゆうか)

流石は勇者様だな!」


 俺は優羽花(ゆうか)の手に自分の手を打ち合わせた。


「ち違うわよ!

ハイタッチじゃないわよ馬鹿お兄!」


「うん知ってた。

でもそれだけ元気に声を出せるなら俺の手を借りなくても立てるだろ」


「こ、このお!

デリカシー無しの馬鹿お兄ぃ!!」


 優羽花(ゆうか)は俺の胸をぽかぽかと殴りつけてくるが、

 これぐらい痛くも痒くもない。

 星剣エクシオンの加護(バックアップ)が働かなければ俺のほうが強いのだから。

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