第34話 エキスパート・ゴウレム
「流石はご賢明なエクスラント王国の公爵ミリフィア様、ご名答よ。フフッ、誰がワタシに暗殺を依頼したか気になるんじゃないかしら?」
「大臣、貴族連中、商会、教会と心当たりを挙げればキリがないね。何しろ国王陛下が急な病で倒れられて、ポーラの弟王子のイクシア殿下は魔族討伐の遠征で不在。
今ポーラとボクが倒れれば王国を牛耳ることはたやすいからね」
「でもクロカワ様、貴方を返り討ちにして捕縛すれば少なくとも暗殺の依頼者が誰かは解りそうですわね」
「フフッ、ぬくぬくと育った王族の小娘がこのワタシに勝てるかしら?」
「わたくしはもう18歳になりました、もうか弱い娘の歳ではありませんわ。シノブ!」
「はっ! 我等、姫騎士団! 姫様と共に!」
シノブ団長以下、計8人の女騎士たちがポーラ姫を中心に陣形を組み剣を構えた。
「光の加護!」
ポーラ姫の言葉と共に姫護騎士団が光に包まれ、全員の魔力数値が上昇した。
次の瞬間、女騎士たちは小石が弾けるように素早い動きで散開して黒川に接近すると彼女が操るゴウレムを剣で串刺しにした。
「動きは封じさせて頂きました、次はそのゴウレムを浄化して差し上げますわ! 光の清浄!」
ポーラ姫が手にした宝玉が仕込まれた杖から閃光が放たれ周囲一帯を包み込んだ。黒川課長の乗っていたゴウレムの土くれの身体が崩れていき、彼女は地面に飛び降りた。
そこをすかさず姫騎士団員が囲み剣を突き付けた。
「クロカワ様、もう降伏なさいませ。大人しくして頂ければこれ以上は手荒なことはいたしませんわ」
「フフッ、そういう風に爪が甘いから小娘なのよ! ゴウレム!」
次の瞬間、黒川課長の足元が爆発する様に盛り上がり姫騎士団員を跳ね飛ばす。彼女たちはくるりと受け身を取って剣を構え直す。
土くれの巨人が再びその姿を現した。
「そんな! 光の清浄はこの周囲一帯でのゴウレムの再召喚を出来なくする筈ですわ!?」
「フフッ、ワタシの専用装備、魔核水晶で作り出したエキスパート・ゴウレムはそんじょそこらのゴウレムとは違うってことよ!」
ゴウレムは突進してきた。姫騎士団が攻撃を仕掛けてその腕を撃ち砕く。
だが砕かれた個所から新たな腕が生えてきて瞬く間に再生した。
「そんなに早く再生するゴウレムなんて…きゃあっ!」
「ああっ!」
姫騎士団のカエデとモジミが再生したゴウレムの腕の一撃を受けて宙を舞う。
イチョウとクレハがふたりをそれぞれ受け止める。
残った姫騎士団員のシダレ、イロハ、ツツジがゴウレムに向かって跳んで剣を振るって左腕、右腕、右足を撃ち砕いた。
「はあっ!」
シノブ団長がゴウレムの真芯に剣を突きつけた。ゴウレムの腹に大穴が空きそこからヒビが広がってその土くれの巨体が崩れ落ちる。
だが次の瞬間、ポーラ姫の背後の地面が盛り上がり新たなゴウレムが出現した。
しまった!? さっきのゴウレムは姫騎士団の注意を引く陽動だったか!
「フフッ、じゃあね、お姫様!」
ゴウレムはその巨大な拳をポーラ姫に向かって振るった。
「地ノ宮流気士術、一の型! 雷迅!」
俺はゴウレムの拳に雷撃状の気を纏った正拳突きを叩き込んだ。ゴウレムの拳から全身に衝撃が伝わってその全身は粉々に砕け散った。
「お兄様!」
「ポーラ、下がってくれ。コイツは俺が決着を付ける!」
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