第334話 鍛えよう
「えっと…お兄。
つまりどういうことなの?」
我が愛しいツンデレ妹、優羽花が俺に質問してきた。
どうやら俺とオートモードヒカリの長い会話に
理解が追い付かなかった様である。
優羽花は頭を使うのが苦手という事もあるのだが、
元々は至って普通の日本の女子高生なのである。
いきなり異世界に連れられて、
こんなファンタジーセカイな会話をされても
理解出来なくて当然だろう。
「かい摘まんで、わかりやすく言うとだな。
優羽花が務める勇者は
決して無敵の存在では無いということがわかったんだ。
ゲーム的な物差しで言うなら
ラスボスの魔王や幹部の四天王的なモノにはめっぽう強いが、
スライムが百匹不意打ちで襲ってきたら
案外あっさりやられる可能性があるってことだなあ」
「えっと…それって…?」
「いや…むしろ普通の人間にもやられる可能性のほうを
考慮しないといけないよな?
野盗が百人不意打ちで襲ってきても、
やられる可能性があるってことになるからなあ」
「え…ええと…つまり…お兄…
あたし…どうしたら?」
優羽花は明らかに動揺し、
その表情の声に怯えの色が浮かんだ。
過去二回の戦闘で優羽花は
実際全く苦戦せず相手を圧倒している。
異世界での自分の強さを立て続けに体感しているから
強さに自信もあっただろう。
それなのに急に弱点を指摘されて、
実は危険な状態だったと言われては怯えるのも無理はない。
でも兄は妹を怖がらせちゃあいけないよなあ。
俺は意気消沈した優羽花を諫めるために、
妹の身体を優しく抱きしめて、
その後頭部をあやす様に優しく撫でた。
「ふぇっ!?
お、お兄い?」
「大丈夫だ優羽花。
もしそんなことになっても、
俺が守るから」
「…お、お兄…」
「と、言いたいが俺が常に側に居るとは限らないからな。
だから…今から、鍛えような優羽花」
「ふぇっ?」
「今の優羽花は武術の心得が全く無い。
これでは魔力が低い相手に不意を喰らえば、
星剣の自動戦闘機能も発動せずにあっさりやられる。
だから今日から鍛錬を積んで、
自分の身を護れるぐらいの武術の腕前を得ようという訳だ」
「ふぅん…鍛錬ねぇ…
面倒くさそう。
ま、まあ…それでも、
お兄が教えてくれるなら…
あたしは別にいいけど…
でもあたし武術とか良くわからないから、
優しくしてくれないとダメなんだからね!」
我が妹は頬を赤らめてそっぽを向きながら俺に言葉を返した。




