第333話 勇者の弱点
「ケイガ、あなたの問いにお答えいたします。
星剣エクシオンはあなたの推測の通り、
勇者の光の魔力を上昇させる魔力増幅機能が備わっています。
”光の刃”は極限まで高まった光の魔力を収束して刃とした星剣の最攻撃形態です。
そしてあなたのもうひとつの推測通り、
勇者の戦う相手が魔族であった場合と
人間であった場合の魔力上昇比率は大きく違います。
いえ正確には…人間や魔族といった種族での区別では無いのです。
相手の魔力数値の高さに比例して、魔力上昇比率も上昇するのです。
星剣エクシオンは、
この世界エゾン・レイギスにおける
人間と魔族の力の均衡を望む私達精霊が創り出した、
この世界に安定をもたらす剣。
個として強いが数の少ない魔族、
個として弱いが数の多い人間。
それでこの世界の力の均衡がとれていました。
ですが500年前に魔界で生まれた強力な魔族、『大魔王』は
余りにも強大な力を持ち、この世界の力の均衡を大きく崩す存在でした。
星剣エクシオンはこの世界エゾン・レイギスに於いて
イレギュラーともいえる強大な魔力を持つ大魔王を倒し
再び世界の均衡を取り戻すための剣なのです。
星剣はあくまで世界の均衡を崩す大魔王を倒す為の剣であり、
全ての魔族そして人間を倒す剣では無いのです。
ですから常に最強の力を発揮する必要はありません。
勇者が対峙する相手の魔力数値に比例して
星剣は能力を解放し、勇者の魔力上昇比率が高まっていくのです」
なるほど…そういうことか。
ディラムと黒川課長で優羽花の魔力数値が大きく違うのは
相手の魔力数値に比例しての事か。
そりゃあ…当時魔力ゼロだった俺相手じゃあ、
星剣は一切その能力を解放しなかったのも頷けるなあ。
…つまり、星剣は弱い魔力相手には一切能力を発揮しない。
過去の勇者の戦い方の記憶から
模倣する能力も発現しないということだ。
しかしそうなると…此処に決定的な勇者の弱点が存在するという事になる。
「ヒカリ、はっきりと問わせてもらう。
もし…優羽花が魔力がヒトケタの相手に不意打ちされた場合、
星剣は何の能力も発揮せず、
武術の心得が全くない今の優羽花はあっさりと殺されるんじゃ無いのか?」
「ユウカの魔力数値は250です。
この世界エゾン・レイギスは高い魔力数値を持つ者は強靭な肉体を持ちます。
生半可な攻撃ではユウカの肉体を傷つけることは敵いませんが、
強力な武器を使いユウカが油断した時を突けば其れは充分に可能です」
オートモードのヒカリは只々事実を述べるが如く、淡々と答えた。




