第332話 再・オートモード
「ケイガおにいちゃん、わたしは光の精霊。
光の精霊は光の勇者と連なるそんざい。
光の勇者とその輩である
おにいちゃんの問いには隠すことなくすべてこたえる。
でもわたしは今は幼いようじょのすがた。
上手くは説明できないとおもうから”オートモード”にいこうする。
あとはオートのわたしからきいてほしい…」
ヒカリはそう言い終えると目と閉じ、
くたりと全身から力が抜けて倒れそうになる。
…が、次の瞬間びくんとその身体を跳ね上げて
堂々とした足取りで立つと、目を開いた。
「光の勇者ユウカの兄にして、
私の兄でもあるケイガ。
星剣エクシオンについて詳しく伺いたいと聞いております。
私の知る限りで全てお答えしましょう」
ヒカリは今迄の幼い少女のたどたどしい口調では無く、
はっきりした物言いで言葉を述べた。
ヒカリのこの状態は俺がこの異世界に召喚されてすぐの時に見聞きしている。
ほんの三週間前の事だが、俺には遥か昔の懐かしい出来事の様に思えた。
今のヒカリは優羽花の幼女好き…
もとい、可愛い妹が欲しいという願望が形になった姿。
本来のヒカリの口調はこの”オートモード”なのかも知れないな、と俺は思った。
「それじゃあヒカリ、早速質問いいかい?
俺は星剣エクシオンの能力について確認したいことがある。
この剣は勇者の光の魔力を変換して刃に変える剣。
そして過去の勇者の戦いが”記憶”されていて
装備した者に戦い方を教えてくれる能力があると、
俺は以前に他らなぬヒカリ自身から聞いている。
そしてミリィの書庫に会った書物にも、
ほぼ同じようなことが書いてあった。
実際、優羽花は
異世界に召喚されたばかりで戦闘について全く素人にも関わらず、
高位魔族ディラムとの戦いで縦横無尽に星剣を振るい、
”光の刃”を顕現させてディラムを敗走させた。
この事実は俺が聞いた星剣の能力をそのまま証左させる出来事だったろう。
だが続く黒川課長との戦いで優羽花は、
ディラムと戦った時ほどの力を発揮しなかった。
星剣も”光の刃”を顕現させはしなかった。
優羽花の初期魔力数値は250。
魔族ディラムとの戦いの時は魔力数値は1500まで上昇した。
対して黒川課長の時は魔力数値は600止まりだった。
そして後日、誤解から優羽花が俺に対して星剣を振り下ろした時も
”光の刃”は顕現しなかった。
俺はここでひとつの推測をする。
星剣エクシオンは勇者の光の魔力を刃に変換するとのことだが、
もっと単純に言って、
勇者の魔力数値を大きく引き上げる能力があるんじゃないのか?
魔力数値がフルパワーの状態なら”光の刃”が顕現する。
そして…勇者が戦う相手が魔族と人間では、
魔力数値の上昇比率が大きく変わるんじゃないか?
つまり勇者と星剣は魔族に対してはとてつもなく強い力を発揮出来るが、
人間に対してはそこまでは強い力を発揮出来ないんじゃないか?」




