第330話 光の力
どごおおんっ!
凄まじい音がした。
次の瞬間、俺を踏みつけたて居た
身丈30メートルの大魔王の巨体が遙か上空に舞い上がっていく。
巨人はそのままの勢いで数百メートル程飛んで凄まじい勢いで地面に墜落した。
「お兄、大丈夫?
生きてる?」
いつの間にか俺の側には妹歴16年の愛しい妹、優羽花が立っていた。
彼女の周囲には”光”が燃え盛る火炎の様に湧き上がっている。
俺は大魔王に踏み潰され意識が薄れゆくその瞬間、
彗星の様なものが飛び込んで来て大魔王を吹き飛ばしたのを見た。
そうか…あれは”光”を纏った優羽花の突進だったか。
俺は今、かなりギリギリの所で命を繋いでいる状態ではあるが…
妹になるべく心配を掛けない様に、軽口気味で言葉を返す。
「ああ、何とかなあ」
「あたしは他人のケガを治す回復魔法は使えないから…
自分のケガは自分の魔法で治してよね。
あ、そこで倒れている翼の生えている女の人も治してあげてよね」
「ああ、わかってるよ」
「お兄、あたしには詳しい状況はよくわからないけど…
とにかくあのでかいのが敵ってことで良いんだよね?」
「ああ、それで合ってる」
「それじゃあお兄、
アイツをちょっとやっつけに行ってくるね」
「ああ気をつけてな、優羽花」
「うん!」
優羽花の全身から光が火柱の如く沸き上がった。
そしてロケットの如く飛んで、
先程自分が吹き飛ばした大魔王の跡を追った。
「なんだ…この強い光の力は…
これはまさか…?」
地面に落ちた大魔王は急ぎ身を起こすと、
その瞳を輝かせ、追って飛んできた優羽花に向けて破壊光線を発射する。
我が妹は腰に差した鞘から剣を引き抜くと真横に薙いだ。
破壊の光線は斬り裂かれてその場に霧散した。
大魔王は光線を立て続けに連射する、
だが優羽花は剣を振るって其の悉くを斬り裂いた。
「剣だけで余の攻撃を完全に打ち消しただと…?」
大魔王は口を開き火球弾を放った。
光属性防御魔法『光防壁』、
全身の肉体強度を金剛並並に引き上げる気士術、『金剛力士』で
魔法的にも物理的にも防御していた筈の俺を
一撃で戦闘不能に追い込んだ超火力攻撃。
だが優羽花は此れも剣の一振りで斬り裂いて完全に打ち消して見せた。
「その剣は…星剣エクシオン!
加えてこの強い光の力…
つまりうぬは…今代の光の勇者か!?」
大魔王はその巨大な右腕に魔力を集中させる。
魔力の光を纏わせた腕をまるで
手斧の様にして優羽花に向けて振り下ろした。
だが優羽花は星剣を振りかぶってその攻撃を真正面から受け止めた。
「馬鹿な…魔力と質量を伴った余の一撃を容易く止めるだと?」
「よくもッ!
よくもおッ!
お兄をあんな目に…
お前は…お前は絶対に許さないっ!!」
大魔王と勇者は互いに攻撃を振りかぶる。
星剣と巨腕が激しく激突した。
互いに一歩も引かず、
その攻撃がぶつかる度に凄まじい衝撃波が巻き起こり
暴風となって周囲に吹きずさむ。
これが魔力数値5000同士の人知を超えた戦いというものなのか。




