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第33話 過去からの襲撃

「げほげほ! 鳴鐘なるがね君! 暴力反対だね! 下ろしたまえ!」


 俺が胸倉を締め上げている少し禿げ上がった男は間抜けた言葉を吐いた。


「先に攻撃をしてきたアンタがそんな事言うか!」


「ハハッ…僕は野蛮な暴力なんかしていないよッ、これは”魔法”だからねえッ!」


 笹川の右手のひらが輝いて俺に向けられる。だが魔法が放たれる前に俺は反射的に笹川の右腕に手刀を叩き込んだ。


「うぎゃあああーー! 腕が! 腕がああーー!」


 折れたかもしれないが、俺は自分に殺意を向けてきた相手に容赦はしない。

 この魔法攻撃というものは俺が見た限り、一撃で人を殺す破壊力がある。

 それをコイツは何の躊躇もせずに俺に撃ってきて、ましてや優羽花ゆうかや妹たちにも攻撃した。

 人を殺す遠慮が一切無いみたいだ。

 笹川は確かに俺を捨て駒にする奴に協力するぐらい下種な人間ではあったが、そこまで凶悪な人間だったか…?


「お兄!」

「お兄様!」


 優羽花とポーラ姫が俺に声をかける。見れば背後から俺に襲い掛かるさっきのゴウレム!

 俺は笹川をゴウレムに向かって投げつけると大きく飛び退いて距離を取った。

 ゴウレムは笹川をその腕で受け止めた。

 やはり、コイツは笹川の仲間だったか。


「フフッ…係長は大切なコマだからね、ここで失う訳にはいかないのよ」


 ゴウレムから女の声がした、俺は体中がぞわっとしたのを感じた。

 この声は…忘れもしない!

 ゴウレムの背中が割れて中から一人の女が姿を現した。


「黒川課長…」


 俺に全ての過失を押しつけて会社をクビにさせた元上司である。


「フフッ…久しぶりね鳴鐘君。半年ぶりかしら? それと今は私課長じゃなくて部長なのよ」


「…なんでアンタがここにいる?」


「何てことないわ、会社で会議をしていたら急に周囲が赤く光って気付いたらこの世界に居たのよ」


「クロカワ様…貴女、どうしてここに?」


「クロカワ君…今更何しに来たんだい」


 ポーラ姫とミリィが険しい顔で黒川課長を見つめている。もしかして二人は知り合いなのか?


「これはお久しぶりね、お姫様。そして公爵様。賢いアナタ達ならもうわかっているのではないかしら?」


 黒河課長がそう言うと足元のゴウレムが唸りを上げて、ポーラ姫とミリィに向けてその長い腕を伸ばした。

 させるか! 駆けだそうとする俺の前をシノブ団長が追い越して手にした剣をゴウレムの手に突き立てた。


「魔族と戦いもせずに王国の装備や資金を奪い、行方を眩ませたこの裏切り者が! お二人に近づくな!」


 ゴウレムの手が撃ち砕かれる。シノブさんは怒りの表情で黒川部長を見据えた。


「裏切り者? 何のことかしらね。そもそも私は貴方たち王国の手下になったつもりは無いのよ」


「そうですねクロカワ様。召喚された貴方に初めて会った時から、その目は野心溢れていたとわたくしは感じておりましたわ」


「そしてクロカワ君、君がここに現れた理由だが…エクスラント聖王国の公爵であるボク、ミリフィアとボクの従妹、第一王女ポーラニアを暗殺しに来たんだろう?」

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