第328話 死と生の間で
「光回復!」
俺は痛みをこらえて精神を静めると光属性回復魔法を行使する。
大魔王に踏み潰されてズタズタになった、
俺の皮膚が、筋肉が、骨が、内臓が、全身の傷が再生していく。
今のは危なかった。
まずは全身の肉体強度を引き上げる気士術、
『金剛力士』の発動があと少し遅かったら
大魔王に踏み潰された時点で、
全身がぐしゃぐしゃになって即死していただろう。
続いてあと少し回復魔法『光回復』の行使が遅れていたら
内臓破裂でやはり死んでいただろう。
俺はギリギリ紙一重で命を繋いだのだ。
だが俺は以前変わらず絶体絶命。
何故なら…俺の身体は大魔王の巨大な足の下に捉えられたままだからである。
「ほう、咄嗟に回復魔法で生き長らえたか?
ならば…うぬが力尽きるまで何度も踏み潰すのみよ」
「ぐっ…ああああああああっーー!!」
大魔王はその巨大な足に力を込めた。
俺は巨人の持つ凄まじい質量に為す術も無く圧し潰されて、
その激痛に耐えきれず再度絶叫した。
「ラ…光回復!」
俺は大魔王の巨大な足に圧し潰されて死ぬ寸前に回復魔法を掛けて、
自分の身体を再生させ何とか命を繋ぐ。
しかし大魔王は回復した俺に対し、
まるでしぶとい虫を踏みつぶすが如く何度も何度も踏みつけて来る。
俺は大魔王に踏み潰される度に死にかけて、
その度に回復魔法を掛けて生還している。
つまり何度も死んで何度も生き返っているのを繰り返している様な状態である。
これは…何という地獄であろうか。
俺の魔力は光の精霊ヒカリと共有している。
彼女が近くに居て魔力接続が切れてい無い限り、
論理上は無限に回復魔法が行使出来る。
つまり俺は無限に回復できるから死なないと…
そう思われるだろうが実際はそう上手く行く話では無い。
まずは回復魔法を行使する前に
即死級のダメージを受けてしまえば一巻の終わりなのだ。
そして魔力を集中させ魔法を行使するには精神の集中が必要なのである。
これは精神力を相当に疲弊させるのだ。
つまり魔法を使う際に重要な精神つまり心が弱ってしまえば…
魔法の威力が下がるだけでは無く、魔法を使うことすらも困難となる。
今の俺は何度も何度も死んでいる様なものであり
精神的には瀕死の状態であり疲弊しきっている。
回復魔法は後何回使えるかどうかといった具合なのである。
まずい…このままでは…俺は…死ぬ…のか…?
俺の心が折れかかっている。
生きる力が急速に失われていく。




