第32話 奇襲
「お兄様、これはゴウレムという魔物です! ですがゴウレムは召喚主がいなくては姿を現わさない魔物のはずですわ!」
「なるほど、つまりは近くに召喚した奴も居るってことか」
俺は着地するとポーラ姫と優羽花を下ろし、拳を構え戦闘態勢を整える。
駆け寄って来たシノブ団長たち姫騎士団にふたりを任せると俺はゴウレムに向かって駆けた。
ゴウレムの巨大な腕はリーチが長いがその動きは鈍重の様だ。
俺はゴウレムが振り回した腕を屈めてかわすと、スライディングするようにその足元へ身を滑らせて足払いをかけた。
上半身が大きいのに対してその足は小さくバランスが悪そうに見えたゴウレムは簡単に重心バランスを崩しその場に倒れ伏した。
よし! 俺はゴウレムの真芯に攻撃をすべく技を練り上げる。
だがそこへ見通しの眼鏡に突然の反応! 魔力数値100! すると俺たちに向かって火の球が飛んできた。
「はああっ!」
優羽花が俺の前に立って手にした星剣でその火球を叩き斬った。
「兄君様、これは魔法による攻撃だね! 魔防壁!」
俺の側にやって来たミリィが杖をかざすと光の壁が展開して、続けて飛んできた火球を弾く。
次々と迫り来る火球! しかし優羽花の斬撃とミリィの防御魔法でその全てを撃ち消していく。
しかしこの攻撃はどこから来ているんだ? 俺は見通しの眼鏡を通して周囲を見渡す。
何もない場所に魔力100の数値! …そこに僅かに人の気配?
そこか! 俺は大地を蹴り上げると一気に跳んで、その魔力の反応がある空間を殴りつけた!
「ぐぎゃあああ!」
悲鳴と共に空間からフードをかぶった一人の男が飛び出して地面をゴロゴロと転がった。
何かの術で俺たちの目から見えないようにしていたのか?
男は自身のマントを羽織ろうとする、するとマントが覆った部分からその姿が消えていく。
なるほどそういう原理か!
「させるか!」
俺は一気に間合いを詰めてそのマント男の胸倉を締め上げて行動不能にする。
これでそのマントを使って隠れることは出来ないだろう。
俺は男の顔を見た。何…こいつは…?
「アンタ…笹川係長か?」
笹川は俺が務めていた会社で全ての失敗を押しつけてクビにした上司の取り巻きの一人である。
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