第315話 死への恐怖
大魔王の左右の腕にそれぞれ俺とヒカリが取り付いて、
拳と蹴りの猛ラッシュを見舞う。
怒涛の二人同時攻撃。
このまま大魔王の防御を抜いて見せる!
だがそうはさせるまいと大魔王の両目が輝いて光線が放たれる。
俺は目線から光線の射線を予測して回避、ヒカリは瞬間移動で回避。
いったん巨人との距離が開いて俺たちの攻撃が中断する。
だがこのまま攻撃を止めてはいけない。
大魔王の巨人の身体にはゆっくりではあるが再生能力がある。
時間を空ければ空けた分だけ回復されてしまうのだ。
実際に俺がひとりで大魔王と戦った時に与えたダメージは再生済みなのである。
俺は大地を力強く蹴って音速跳躍、
再び大魔王に取り付いて連続打撃を仕掛ける。
此処に一進一退を繰り返す俺たちと大魔王。
俺とヒカリの間髪入れずの猛攻に、
大魔王の防御が僅かに下がった。
俺はその隙を逃さず次の気士術を行使する。
「地ノ宮流気士術・二の型、飛燕!」
俺は両足に気を集中させ高速で燕の如く飛翔、
大魔王の右胸に到達しその皮膚装甲に蹴りを見舞う。
「ヒエン!」
ヒカリも高速で燕の如く飛翔して大魔王の右胸に蹴りを見舞った。
二発の『飛燕』が大魔王の右胸を切り裂いて巨大な十字の切り傷を作り描いた。
よし、このまま皮膚装甲を貫いて一気に止めを!
俺は気をロケットの様に噴射して空中で姿勢を反転した。
全身に纏った気の周囲に雷状のスパークがほとばしる。
「地ノ宮流気士術一の型・改、雷迅王!」
雷撃状の気を全身に纏った俺は、
自分自身を巨大な雷弾と化して大魔王の右胸に向かって突撃した。
「ライジンオウ!」
ヒカリも巨大な雷弾と化して大魔王の右胸に向かって突撃する。
俺とヒカリ二発の電磁砲弾は、
大魔王の”核”を撃ち抜くべく二筋の閃光となって飛翔した。
そして着弾まであと少しという刹那…
大魔王の口が突如開いて、その口内が赤く輝いた。
…これは、まずい!
俺は自分の背中に氷が差すような凄まじい悪寒が走るのを感じた。
”死への恐怖”というべきものだろうか?
そして俺は自分が感じた”死”から逃れるべく、
気を全力噴射して電磁砲弾と化した自身の射線を力任せに変更した。
次の瞬間、大魔王の口内から灼熱の火球弾が放たれた。
それは俺の標的であった大魔王の右胸への射線に丁度重なる様に飛んで、
そのまま地面に突き刺さり大爆発した。




