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第311話 人知を超えた戦い

「おにいちゃん。闇の精霊は、

『ウフフ…ケイガクンの童貞をつまみぐいしたいナ』

とかヒカリには良くわからないことを言いながら

何度もおにいちゃんのベッドに潜り込もうとして来るので、

そのつどわたしがつまみ出して追いはらっている。


その際にお互いちょっとした会話をしたりもしている。

さっきの”おとこのひとが喜ぶこと”は

その時におしえてもらった。


わたしは光の精霊ヒカリ。

闇の精霊からおにいちゃんを護るのがやくめ。

わたしにとってこれぐらいのこういは、

人間がまいあさ花壇の草むしりをするのと同じぐらいのこと。

だからおにいちゃんには

わざわざ言うまでのことでもないと判断して

今まで黙ってた」


「え、ええっーー!?」


 俺はヒカリが明かした驚愕の事実に思わず声を上げてしまった。

 確かにヒカリは元闇の精霊にして魔界五軍将・魔精将リリンシアの襲撃から

 俺を守るために側に居る。

 だが実際にリリンシアが日頃から俺に夜這いを掛けて来て、

 ヒカリが応戦している何てことは…

 俺には全く思いも寄らかったのである。


 …えっ俺?

 何気に貞操の危機を迎えていたんですか??

 しかも俺が全く気が付かない間に?

 それも何度も??


 俺は地ノ宮流の気士(ちのみやりゅうのきし)

 例え眠っていても、

 敵が近づいてくればその気配で気が付く筈なのである。

 しかもここ三週間の鍛錬で俺は、

 引籠りになる前のレベルにまで力を取り戻しつつある。

 異世界に飛ばされて直ぐの時よりも、

 相手の気配を察する感覚は遙かに増しているにも関わらず…

 全く気取らせない無いなんてことが…?


 これが…この世界エゾン・レイギスを創造したという精霊同士の、

 人知を超えた戦いという事なのか…?

 まあその戦いの理由は世界の命運では無く、

 俺の童貞なんですけどね!


「それにしても…いい加減にしろよ、あの女(リリンシア)…」


 俺の知らぬ間に寝込みを襲おうとしていた

 あの女(リリンシア)に対して思わず俺は怒りの言葉が漏れてしまった。

 俺は男であれ女であれ俺は敵に対しては容赦はしない。

 だがリリンシアに対しては、

 特に厳しい物言いをしていると俺は自覚している。

 だがそれは当然である。

 リリンシアは俺に対して取る行動は、

 全て底意地の悪い悪意しか感じないからである。

 何がつまみ食いだよ馬鹿にしやがって…

 やはり一度ぶっ飛ばさなくては…

 しかし彼女は魔界五軍将のひとり魔精将であり元闇の精霊。

 三週間の鍛錬で前に彼女と戦った時よりも

 大きく力を伸ばしている今の俺でも勝てる保証は無いだろう。

 だが、それでも…俺は!


 「このまま、あの女(リリンシア)にやられっぱなしでは居られないんだ!」


 俺はひとりの男として、

 此処にリリンシアとの再戦を強く決意した。

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