第308話 召喚存在
「わたしは光の精霊ヒカリ。
この世界エゾン・レイギスの安定を望む存在。
世界を創造した精霊の一柱として、
この世界に直接力でかんしょうすることは許されない。
だけど今のわたしはおにいちゃん、
鳴鐘 慧河と魔力を共にする契約をした存在。
精霊としての存在ではなく、
契約者に自分の魔力を与え、
契約者の命を守る”召喚存在”としてなら
大魔王、あなたとだって戦える」
「”召喚存在”…なるほどな…。
それでうぬら自身が作り出した世界の法則を抜けたということか…。
後者の妹云々については余にはよくわからぬが…まあ良い。
だが良いのか光の精霊よ?
それではうぬは竜や召喚獣などといったレベルにまで格落ちしたという事であろう?
すなわちうぬの世界の創造者たる精霊としての強大無比な力は
大きく削がれてしまったと云う事ではないか。
その程度の力で魔界を統べる魔族の長、
大魔王たる余に勝てると本気で思っているのか?」
「んー。
おにいちゃんと一緒なら、
きっと勝てる」
ヒカリは腰に手を当てて胸を張ると、
自信たっぷりにそう答えた。
「おにいちゃん、わたしたち精霊は世界の法則により戦う事は出来ない。
だけど精霊としてではなく
人間と魔力契約をした”召喚存在”としてなら戦う事は可能。
その場合は精霊としての力は大きく封じられて、
魔力の契約をした人間と同等の強さになり、
戦闘スタイルも契約した人間を模倣する。
つまりヒカリの戦闘スタイルはおにいちゃんと同じ”かくとうじゅつ”になる。
でも今の短い手足じゃ、
おにいちゃんみたいには戦えないから
見合った身体に調整する」
ヒカリの身体を包む光球がよりいっそう輝いた。
それと同時に俺の目に掛けている見通しの眼鏡が、
ヒカリに”初めて反応した”。
100、300、700…
凄い勢いで上昇していく魔力数値。
元々ヒカリは見通しの眼鏡が一切反応しなかった。
だが精霊の魔力がゼロというのは有り得ない。
他らなぬ俺がヒカリと魔力を共有しているからである。
この異世界エゾン・レイギスは魔力が基準となっているセカイ。
より魔力が高ければ高い程より生物として強い。
見通しの眼鏡は、
視た相手の魔力を数値化してその力量が一瞬でわかる
戦闘用の魔法装備である。
つまり、戦闘用魔法装備である
見通しの眼鏡が一切反応しない精霊という存在は
そしてこの世界に干渉する力としての魔力を持ち合わせていない。
すなわち戦闘行為を行うことが出来ない存在なのでは?
と、俺は推測していた。
ヒカリと大魔王の会話からして…
その推測は遠からずと言った所であろう。
そして今、俺の目の前でヒカリは
精霊という戦うことが出来ない存在から
見通しの眼鏡が反応する
戦うことが出来る魔力を持った存在へと変わったということである。




