第305話 雷迅王と金剛力士
地ノ宮流気士術・一の型改、雷迅王。
雷撃状の気を全身に纏い超音速で飛翔、
自身を巨大な雷の弾丸と化する技。
俺は全身ごと電磁砲弾と化して大魔王の右胸に突っ込んだ。
轟音と共に着弾し巨人の身体に衝撃を与えた。
「ぐ、おおおっ!?」
初めて大魔王が苦悶の声を上げた。
これは、効いている?
そして巨人の足がよろめいて、そのまま仰向けに倒れ込んだ。
ずうううん!
地を響かせる轟音が周囲に響き渡った。
俺はそのまま大魔王の左胸に取り付いたまま、
気を再度高める。
そして流れる様に次の気士術を行使する。
『地ノ宮流気士術・三の型改、金剛力士!』
俺は全身を鋼並み…いや鋼以上の硬度に引き上げた。
地ノ宮流気士術・三の型、金剛は
気を身体に纏わせて肉体を鋼並みの硬度に引き上げる防御主体の技である。
この硬度は気の大きさに比例する。
俺は気の集中と『光の加護』の魔法を
同時に使用することで気力が通常の二倍になっている。
今の俺の気の大きさなら…
技の名前の通り金剛に近い肉体硬度に近付けられるだろう。
『金剛』の発展型の技であるこの『金剛力士』という技は、
全身の硬度を引き上げた状態で敵の懐に飛び込んで
一気呵成に近接格闘戦を仕掛け
敵を瞬く間に殲滅する攻防一体の技である。
「はああああ!!」
俺は金剛に近い硬度の右の拳を巨人の右胸に叩き込んだ。
息を付かせる間もなく左の拳も叩き込む。
そして再度右拳を。
怒涛の音速打撃ラッシュ。
このまま大魔王の右胸の”核”を破壊する!
俺が攻撃する最中、不意に巨人の瞳が輝いて光線が発射される。
「光防壁!」
俺は光属性防御魔法を展開し巨人の攻撃を防いだ。
だが巨人の瞳は再び輝いて光線が連続で発射される。
俺の身体を包む光の壁が軋んで砕け散った。
そして三度巨人の瞳が輝く。
「光防壁!」
俺は防御魔法を張り直して光線を弾き散らす。
光の加護の身体能力強化魔法を常に展開している状態に加えて、
光防壁も常に展開している今の状態では…
俺の魔力はそう長くは持たないだろう。
だから俺は一気に勝負を懸ける。
「うおおおおお!」
俺の音速の拳の猛連打が大魔王に突き刺さる。
そして右胸を覆う皮膚装甲に亀裂が入った。
よし、いける!
そう思った刹那…俺の視界を真っ赤な閃光が覆った。




