第295話 答え
「ま、魔力数値5000…!?」
イルーラ達を取り込んで目の前に出現した
巨人の凄まじい魔力数値に立ち尽くす俺。
蔦の攻撃から唯一生き残った獣人型魔族ヴィシルも呆然としている。
「ぐはあああああ…
イルーラの一部、その下僕の魔族共、そして下位魔族共…
その全て取り込んで造り上げたこの身体…
魔力数値5000か…
ふん…所詮は”この程度”のチカラであろうなあ…」
蔦の巨人は地の底から震えるような声で言葉を発した。
さっき迄のイルーラの声とはまるで違う、くぐもった様な声。
これが奴の地声ということか?
「…改めて聞く、あんたは何者だ!」
「まだわからぬか…?
といいたいが、只の人間では気付かぬのも無理もあるまいな。
だがそこのイルーラの下僕なら解るのでは無いか?」
巨人はヴィシルを指さして言葉を述べる。
「…よくも」
「ん?」
「…よくもッー!
イルーラ様を!
エグゼヴ殿をガグーンをライゼガを!
よくもおおッーー!!」
魔族ヴィシルはその指先から
鉄をも切り裂くという、
獣人型魔族が誇る魔爪を伸ばして
巨人へと飛び掛かった。
がいんっ!
ヴィシルの魔爪が巨人の腕を斬りつける。
「あああああッー!!」
ヴィシルは巨人の周囲を高速で跳び交いながら、
その指先から生えた計十本の魔爪を音速で振るう。
何というスピードだろうか。
速度だけならエクゼヴよりも上、
俺でも完全に見切れるか?
その凄まじいスピードの跳躍と魔爪の斬撃を組み合わせて
あらゆる敵を切り刻む超高速斬撃攻撃は、
一陣の竜巻と化して巨人を包み込んだ。
だが…巨人の身体には傷一つ付かなかった。
「五月蝿い」
巨人の目から一筋の光線が放たれてヴィシルに直撃した。
力無く墜落していく彼女。
まずい!
俺は高速で翔けて地面に衝突する寸前でヴィシルを受け止めた。
「おい、あんた!
大丈夫か!?」
「うう…イルーラ様…みんな…」
その胸には風穴があき、その周囲からは肉の焼ける匂い。
彼女の全身からも煙が上がってこれは…致命傷である
さっきの光線は巨人は全く本気を出していない様に見えた。
それでこの威力だというのか…。
「そこのイルーラの下僕は見た所せいぜい300歳以下の若い魔族。
実際に余の姿を見たことも、そして声も聞いたことも無いのなら、
気付けないのも無理はあるまいな」
巨人はさもおもしろくないといった感じで言葉を述べた。
「…まさか、あんたは…?」
巨人の台詞から俺の脳裏にひとつの答えが導き出された。
だがもし本当にその通りだったら…
こんな所で、
こんなにも早く対峙する相手では無い筈である。
外れて欲しい…
俺はそう願いながらも…
その答えを口にした。
「…魔族の長、『大魔王』…なのか?」
「がはははははははははははは!!!!」
大地が震えるような凄まじい笑い声が周囲に響き渡った。
何という声量か。
並の人間では聞いただけでダメージを受けかねない。
「よくぞ余の正体に気が付いたな人間よ。
その通り…余は『大魔王』。
魔界を支配する存在。
そしてゆくゆくは地上も平らげて…
この世界エゾン・レイギスの全てを支配する存在よ」




