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第22話 優羽花(ゆうか)の覚醒

「う、おおおお!」


 俺は両腕を交差させてディラムの斬撃波ざんげきはを受け止める。

 痛い、すごく痛くて腕がちぎれそうだ! 三の型、金剛こんごうで肉体強度をはがね並みに引き上げている筈なのにこの威力。


「…おいおい、身体を両断されても死なないって魔族ってのは不死身なのかよ?」


「我等魔族でもに身体を二つに引き裂かれれば無事では済まないだろう。

だが斬られる前に自らの意思で分離すれば問題はない。

それよりも私は貴様が我が斬撃波をあえて受けた事に違和感がある。

上半身だけという不完全な構えで放った技など貴様の速さならいくらでもかわせただろう?」


「俺の後ろには大切な妹が居るんでね。逃げる訳にはいかないんだなこれが」


「…お兄」


「なるほど、女子供を護るその姿勢は見事なり。だがそれはお前の敗北に繋がった」


 くっ、腕が動かない…まさか腱が切れたのか!? どうする? ここまでなのか? ならせめて優羽花だけでも…。


優羽花ゆうか…逃げろ。ここは俺が何とかあいつを食い止めるから…その間に」


「な、何言ってんのよお兄! 一人で逃げろなんて馬鹿じゃないの! あたしは…いつもお兄と一緒なんだからね!」


「さらばだ異世界の戦士よ!」


 上半身だけで宙に浮くディラムはその手に持った剣を俺に向かって振り下ろした。


「お兄に! 手を出すなあああーー!」


 優羽花の絶叫と共にその身体全体から炎の様なものが吹き上がった。

 俺が掛けている見通しの眼鏡スカウターレンズには優羽花の魔力数値は600と表示されている。

 先程の2倍以上の数字である。つまり優羽花の身体から吹き上がっている炎のようなものが優羽花の本気の魔力ってことなのか?

 優羽花は手に持っていた星剣せいけんを振るった。それは斬撃波となってディラムに直撃した。


「何ィ! これは!? ぐおおおお!」


 優羽花が放った斬撃波に吹き飛ばされながらも何とかその場に踏み留まるディラム。


「魔力600だと!?感情の高ぶりで魔力を上げたというのか? だがそれでも我の魔力に及ばぬ筈…しまった身体を分離させたことで我が魔力が半減したか!? ならばッ!」


 ディラムの上半身は地上に降下すると待機していた下半身に繋がって瞬く間に元の身体に戻った。

 そして優羽花に向かって凄まじい速度で駆けて剣を振りかぶった。


「うああああーー!」


 優羽花の叫びと共にその手に握った星剣に光が集中して、それは一回り大きく豪華な形の剣に変化した。

 優羽花の魔力数値は1200まで上昇した。ディラムの数値を大きく超えている。

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