第192話 欲深
「…何よそれ…」
「ははっ、優羽花にとっては只の迷惑だったかな?」
「…その言い方ずるい」
「ずるい?」
「あたしは別に!
”特別”何て言われても!
嬉しくなんて無いんだからね!」
「…う、うん…?
その言い回しだと…
ツンデレ的には嬉しいという事か?」
「いちいち口にすんな!
このデリカシー無しの馬鹿お兄い!!」
「何だ、やっぱり嬉しかったんだな?
優羽花が喜んでくれるなら兄さんも嬉しいぞ。
よし、お前がもっと喜んでくれる様に、
今からほっぺをいっぱい突いてあげような」
「だからそれはすんなって言ってるでしょ!!」
俺と優羽花は10年同じ屋根の下で過ごした兄妹として、
お互い遠慮なく言い合った。
「…ふふっ、やっぱりケイガ兄君様とユウカは仲がいいよね。
一昨日に妹になったばかりのボクたちじゃあちょっと間に入れないよね…」
「ミリィお姉様、そんなことはありませんわ。
ケイガお兄様はきっと隔たりなく、
わたくしたち妹全てを愛して下さいますわ。
…お兄様ー!」
「ええっ!?
今のケイガ兄君様とユウカの間に割って入るなんて…
ポーラは肝が据わっているなあ…」
俺の名前を呼びながら、俺と優羽花の間に割って入って来たポーラ姫。
彼女は俺の顔をまっすぐ見つめながら言葉を述べる。
「お兄様、ユウカ様は”つんつん”を嫌がっておられますわ。
無理強いはいけないとわたくしは思いますの!」
「えっ?
これってツンデレ特有の、
実はして欲しいけど素直になれない奴なんじゃないのか?」
「だからあたしはさっきからすんなって言ってるでしょうが!」
「…まあ本当に嫌がっているのは知ってはいたけどなあ。
俺が優羽花の頬を突きまくりたかっただけだし」
「…こ、このクソお兄ぃ…」
優羽花が拳を握りしめて震えている。
おっと、これはからかいが過ぎたな。
物理的制裁が来ないうちに引くとしようか。
「でしたらお兄様」
ポーラ姫が鉛筆を持った俺の右手を包むように握った。
「わたくしにユウカ様の分の”つんつん”もして下さいの」
「…ええっー!?
ポーラ、あれだけ兄君様に”ぷにぷに”して貰ったのに…
まだ足りないとでも言うのかい?」
「ミリィお姉様、わたくしはまだまだ満足しておりませんわ」
「…ボクはもう満足しているよ。
そういうところは流石は第一王位継承者というか…
国の長としての欲深さと言うべきなのかな…?」
「…あ、ユウカ様。
”つんつん”を本当はして貰いたいようでしたら譲りますけれど…」
「ポーラさん、あたしは本当にいいから…
良かったねお兄!
ポーラさんがお兄の趣味に付き合ってくれるって!」
ジト目で俺に言葉を放つ優羽花。
ううむ、何か棘がある言い方だよなあ…。
「それではお兄様、ユウカ様のお許しも貰えましたので…
ポーラにもう一度、”つんつん”をお願いしますの」




