第165話 図星
「何をしているんだいポーラあ!」
「きゃうン!」
俺の顔に、にじり寄って来たポーラ姫の見目麗しいその顔は
横から延びて来たミリィの大きな杖にぐぐいっ! と押しのけられた。
大きくのけ反る彼女の顔。
俺は再び既視感を感じた。
この展開は前にもあった。
まるで実家の様な安心感である。
俺は25歳童貞、
見目麗しい美少女であるポーラ姫にこう迫られては、
なす術も無く身体が硬直して、まともに動けなくなってしまう。
だからミリィの毎度のツッコミは正直、大助かりなのである。
俺は心の中でミリィに感謝した。
「うう…いきなり杖で押しのけるなんて酷いですわミリィお姉様!」
ポーラ姫は仰け反った状態から瞬く間に復帰するとミリィに向かって強く抗議した。
「暴走している愚妹を鎮めるのは姉の役目だからねポーラ!
何で君は事あることに兄君様に口づけをしようとするんだい!」
「ミリィお姉様、
このエクスラント聖王国の姫であるわたくしが
”お姫様抱っこ”をされてしまったのです。
姫がお姫様抱っこされるなんて…
まるで古の英雄物語の勇者様と姫の画そのものではありませんか?
古の物語では姫は勇者様に乙女の唇を捧げ力を与えるのが定番ですわ。
ですからわたくしは物語の姫と同じ様に、
魔族と戦うケイガお兄様に唇を捧げて力を与えるべきと思ったのです」
「…ふふふっ、またしても論理が飛躍しているよねポーラ!
それっぽく言っている様だけど、
単に兄君様と口づけしたかっただけだよね!」
「そんなことはありませんわミリィお姉様。
わたくしは魔族と最前線で戦うエクスラント聖王国の聖王女。
不肖ながらポーラの唇でお兄様により力を与えられるという可能性があるのなら、
わたくしはすすんでこの身を捧げますわ。
…それにケイガお兄様もわたくしとの口づけを望んでいましたわ。
だってポーラにはお兄様の唇がちょっと物欲しそうに見えましたもの」
「…えっ?」
思わず驚きの声を上げる俺。
俺とポーラ姫は血の繋がりこそないが、
兄と妹の契りを交わしたれっきとした兄妹である。
兄は妹を性的な目で見てはいけない。
それが兄の絶対的な心得である。
けれどポーラ姫は金髪碧眼の美少女、
そして何よりおっぱいでかい!
俺はおっぱい星人にて童貞歴25年の健康的な男なのだ。
そんな俺が…
見目麗しい巨乳美少女お姫様に迫られては…
もし妹じゃ無かったら…
このままキスしたいな…
と、思うのは当然であろう!
ポーラ姫はそんな俺の秘めた思いを…欲望を…
その曇りなき眼で見抜いてしまったとでも言うのか!?
俺は彼女の指摘の言葉に図星を突かれてしまい、
思わず声を上げてしまったのである…。




