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第162話 強引な勝利宣言

 シノブさんとしばらくやり合って俺は確信した。

 彼女は相当な腕前だ。

 地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつの使い手である武術家の俺としては、

 彼女とはもっと時間をかけて組手をしたかったのが正直な所である。

 強い相手と長く戦ってみたいというのは武術家特有のエゴであろうか?


 だがこの組手は只の稽古ではない。

 シノブさんが俺をお姫様抱っこしたいという、

 彼女特有の意味不明なポンコツ理論で仕掛けて来たものなのである。

 俺は正直これ以上はやり合いたくなかった。

 もし負けようものなら…

 俺は妹であり女性である彼女にお姫様抱っこされてしまい、

 兄として、男としての尊厳を何もかも破壊されてしまうからである。

 何としても其れは避けたかった。

 俺にだって、どうしても譲れないものがあるのだ。


 だから俺は逆にシノブさんをお姫様抱っこすることで

 一方的に勝利宣言をして、この戦いを終わりにしたのである。


「…ケイガ兄様、見事です。

確かにお姫様抱っこをする側が逆にされてしまっては、

ぐうの音も出ませんね。

私の完敗です」


 俺の腕の中でシノブさんは素直に負けを認めた。

 その様子を見て俺は一安心する。

 何しろ彼女は意味不明のポンコツ論理で俺に挑んで来た経緯があるので、

 これで引き下がらなかったらどうしよう…

 という不安要素があったからである。


「「「きゃー兄様ー!!!」」」


姫騎士団(プリンセスナイツ)の黄色い声が響き渡る。

いつの間にか俺とシノブさんに追い付いていた様で、

今まで戦いを観戦していた様である。

彼女たちの賞賛がこそばゆい。


「流石は兄君様(あにぎみさま)だね」


「シノブさんも凄い動きだったけど…やっぱりやるじゃないお兄」


 ミリィと優羽花(ゆうか)も俺たちの戦いを見ていた様だ。

 ふたりも俺を称賛してくれたが、

 俺からすれば余り褒められたものでは無い。

 戦闘においての俺の身体の動きはぎごち無く、

 まだまだ本調子からは遠いのである。

 だが俺は男であり、兄である。

 見目麗しい美少女、美人揃いであり、

 愛しい妹である彼女たちから褒められて嬉しく無い訳は無い。

 だから俺は素直に言葉を返した。


「みんな、ありがとうな」


「しかしケイガ兄様、姫騎士団(プリンセスナイツ)が全員揃っている前で

こうもあっさり負けてしまっては、

団長としての面目がまるでありませんね。

これはゆくゆくは兄様に責任を取って貰うしかないでしょう」


「…えっ、責任って?」


彼女は俺の耳にふわりと顔を寄せると囁くようにそっと耳打ちした。


「団長を寿退団ということですよ、兄様」

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