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第156話 早食い選手権

「それでは皆、いただきましょう」


「「「いただきます!!!」」」


 ポーラ姫の言葉に返して、食卓の皆が一斉に食事の挨拶をした。


 ちなみに”いただきます”は俺の元居た世界、

 『地球』では『日本国』のみの食前の挨拶である。

 この異世界エゾン・レイギスでも同じ挨拶があるとは驚きである。

 元からこの異世界に存在していた挨拶かも知れないし、

 俺たちより以前に異世界召喚された日本人から伝わったのかも知れない。

 おそらく後者の可能性が高いと俺は踏んでいるのだが。

 何がともあれ…日本人である俺にとっては、

 常にしていた挨拶がこの異世界でも出来るのは素晴らしい。

 それでは目の前の料理の食材と作ってくれた人すべてに感謝して頂こう。


 今日の朝食は白米、味噌汁、漬物、目玉焼きと葉野菜の添えである。

 うん、日本の朝ごはんだコレ!

 これはこの城の銭湯と同じく、

 以前に異世界召喚された日本人から伝わったんだろうと思う。

 先人の日本人は一体どこまでこの異世界に日本文化を広めているのだろうか…。

 まあ生粋の日本人の俺からすれば、

 異世界で在りながら食べ慣れた和食が食べられるのは願ったり叶ったりである。


「それでね! ケイガ兄様がシダレの身体をひょいと持ち上げてね!」


 シダレがモミジに俺にお姫抱っこされた事を楽しそうに話している。

 とても喜んでいくれた様で兄としても嬉しい限りである。


「ふーん、お兄。そんなことしていたんだ」


 優羽花(ゆうか)がジト目で俺を見ながら言葉を述べる。


「俺は皆が望んだからしただけで他意は無いからな。

お前もお望みならして上げるぞ?

お姫様抱っこ」


 俺はニヤニヤしながら言葉を返す。


「ば、馬鹿じゃないの!

別にあたしはそんな漫画みたいなことをされたくは無いんだからね!」


 予想通りの反応である。

 俺はぷっ、と思わず吹き出してしまった。


「何笑ってんのよ!

本当キモい!

馬鹿お兄!」


 うむ、今朝も妹歴16年の愛しい我が妹は平常運転でなによりである。


「…あの、ケイガお兄様。

たった今、お兄様がお姫様抱っこをしてくれたという

どきどきイベントを耳に挟んだのですが…」


 ポーラ姫が頬を赤らめながら恐る恐る俺に問いかけて来た。


「まあ色々あって…希望があれば俺がお姫様抱っこをすることになったんだ」


「つまり、わたくしもして頂けるのですか?」


「ああ、もちろんだよ」


「それでは早速…きゃうン!」


 食卓の椅子から立ち上がろうとしたポーラ姫を杖で制するミリィ。


「行儀が悪いよポーラ。

別に兄君様(あにぎみさま)は逃げないんだから、

そんなに焦らなくても良いじゃないか?

まったく我が愚妹はがっつき過ぎていけないね」


「うう…かと言って杖で押さえつけるのは酷いですわミリィお姉様。

花の時間は短いと言いますわ。

わたくしには一分一秒も惜しいですの!」


「まあ朝食が終わったらゆっくりして貰おうじゃ無いか。

楽しみは後に取っておくのも考えだよ。

それと兄君様(あにぎみさま)

当然ボクもお姫様抱っこ希望だからね?」


「ああミリィ」


「ケイガ兄様、勿論私もお願いします」


「はいシノブさん」


「兄様、モミジも」


「了解だモミジ」


「それでは誰が最初にお姫様抱っこして貰うかだけど、

フライングしようとしたポーラは罰として最後だね」


「ど、どうしてですのミリィお姉様!?」


「ミリィ様、そうですね…

恨みっこ無いように簡単な勝負ごとで決めるというのはどうでしょうか?」


「それじゃ、朝ごはんを食べ終わった順と言うのはどうです?」


「モミジのアイディアの採用だ!

それじゃあ皆、行くよ!」


「えっ? えっ?

ちょっと待って下さいの…

わたくしそんなに早く食べれませんわ…」


 俺の前でいきなり早食い選手権が始まった。

 ちなみに一位は発案者のモミジ、

 良く食べる子という事でぶっちぎりであった。

 続いてシノブさん、ミリィ、優羽花(ゆうか)

 最後はかなり遅れてポーラ姫である。

 別にそんな競争をしなくても俺は全員にするつもりなのだが。


 …ちなみに口ではあんなにもお姫様抱っこを否定していた優羽花(ゆうか)が、

 しれっと早食い競争に加わっていることについて俺はあえて何も言わなかった。

 妹がお望みなら黙って受け入れるのが兄の度量であろうから。

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